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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第21話:敗北と再生、そして新たな絆

ギルドに満ちるは、重苦しい沈黙。

誇り高きドワーフのギルド長、バルバロッサは、膝から崩れ落ちたまま石のように固まっていた。


「…素晴らしい斧ですね」


沈黙を破ったのは、俺、フィン・アッシュフォージだった。

俺はバルバロッサの前にそっと膝をつき、無惨にヒビの入った戦斧『龍哭』を、丁重に手に取った。


俺の『魂魄の瞳』には、この斧の魂が、予期せぬ敗北に打ちひしがれ、震えているのが視える。

最高の才能を持つトップアイドルが、スキャンダル(敗北)によって、引退の危機に瀕している。プロデューサーとして、これを見過ごすわけにはいかない!


「ギルド長。もしよろしければ、この子の傷、私が治しましょうか?」


俺の提案に、その場にいた全員の時間が止まった。


バルバロッサは、虚ろな目で俺を見上げた。


(治す…だと? このワシですら修理不可能な、芯にまで達した亀裂を…?)


彼の心は、ドワーフのプライドと、愛する斧を救いたいという親心の間で、激しく揺れ動いていた。

一方、ベアトリスは戦慄していた。


(ま、まさか…! この聖なる斧までも『調教』するつもりか!? ライバルを打ち負かすだけでは飽き足らず、己の支配下に置こうというのか!?)


「よしきた!任せてください!」


俺は龍哭を抱え、再び火床の前へと立つ。


「君も、俺のプロデュースを受けてみないか? 傷ついた君は、以前よりもっと、セクシーになれるんだぜ?」


俺が斧に甘い言葉で語りかけると、龍哭の魂が(な、何を言うか、人間風情が…! しかし…セクシー…?)と、わずかに反応を示した。


俺は、ヒビの入った部分に、短剣を作ったときに出た鉄粉を振りかけ、特殊なフラックス(融剤)で溶接していく。これは、敗北の傷を隠すのではなく、あえて新たな魅力として昇華させる、俺流の『金継ぎプロデュース』だ。


数十分後。

ヒビは完全に塞がり、そこには稲妻のような虹色のラインが走り、以前とは全く違う、妖艶なまでの魅力を放っていた。

龍哭の魂は、以前の荒々しい輝きとは違う、静かで、しかしどこまでも深い、青い光を放っていた。


(これが…私…? 傷ついたはずなのに、前よりもずっと、自分が誇らしい…)


「おお…! おおおぉぉぉっ!」


バルバロッサは、生まれ変わった我が子(斧)の姿を見て、ついに感極まって涙を流し始めた。

彼は、震える手で龍哭を受け取ると、その虹色の傷跡を、愛おしそうに撫でた。


そして、次の瞬間。

バルバロッサは、立ち上がると、俺の前に進み出て、深く、深く頭を下げた。


「フィン・アッシュフォージ殿…。ワシは、間違っておった。鉄への道は、一つではない…。お主のその『魂の鍛冶』、ワシの凝り固まった常識を、見事に打ち砕いてくれたわ。…礼を言う」


その潔い敗北宣言に、ギルドの職人たちから、どよめきと、やがて称賛の拍手が沸き起こった。


「ギルド長!」


「なんて潔い…!」


そのカオスな光景を、ベアトリスはただ一人、混乱の極みから眺めていた。


(ああ…ギルド長は、魔人の軍門に降ったのではない…。その圧倒的な実力と、器の大きさに、心服してしまったのだ…! 恐怖による支配ではない…これは、カリスマによる心服…! なんてこと、こちらのほうが、遥かに厄介だわ!)


こうして俺は、バルバロッサと奇妙なライバル兼盟友のような関係を築き、王都鍛冶師ギルドから、一目置かれる存在となったのであった。


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― 新着の感想 ―
敗北(スキャンダル)を経て、それを魅力に変えて蘇らせる…。本物のアイドル相手でも至難の技過ぎるプロデュースだ…。 チートで無双し過ぎると足元を掬われるものだが、この物語の場合はこの勢いのまま突っ走る…
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