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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第18話:公爵謁見と父娘のすれ違い

白銀騎士団による丁重かつ厳重な「護送」の末、俺とハンナはついにルミナス公爵の居城へと到着した。

謁見の間へと通される前、ベアトリスは父であるルミナス公爵に、俺という存在の危険性(と彼女が判断したもの)について必死に報告していた。


「父上!あの男は危険です!彼の力は未知数。聖剣を私物化しているかのような言動も見受けられました。魂と対話するなどという、およそ信じがたい能力の持ち主です!」


「おお、ベアトリス!それは本当か!」


でっぷりと、しかし威厳のあるルミナス公爵は、娘の報告に目を輝かせた。


「なんと!ワイバーンを一撃で屠り、魂と対話する力を持つ!噂以上の逸材ではないか!よくぞ、そのような傑物を、丁重にここまで連れてきてくれた!」


「ち、違います父上!私は危険性を訴えているのです!そのような得体の知れない力を、安易に信用してはなりません!」


「何を言うか、ベアトリス。未知の力だからこそ、価値があるのだ。帝国の『魂を縛る武具』に対抗するには、我々も常識を超えた力に頼るしかない。フィン殿は、まさに天が我々に遣わした救世主やもしれんぞ!」


父と娘の会話は、致命的なまでにすれ違っていた。

ベアトリスが訴える「危険性」や「異常性」は、公爵にとっては「類まれなる才能」や「非凡さ」の証としか聞こえていない。公爵は帝国の脅威を憂うあまり、藁にもすがる思いで、規格外の力を持つ俺に大きな期待を寄せていたのだ。

ベアトリスは、そんな父の焦りを理解しつつも、騎士団長としての現実的な視点から、俺という存在のリスクを排除しようと躍起になっていた。このすれ違いが、今後の勘違いをさらに加速させることになる。



やがて、俺たちは謁見の間へと通された。


「面を上げよ、フィン・アッシュフォージ。君の噂はかねがね聞いている。よくぞ、我が家の宝剣を蘇らせてくれた。心から礼を言うぞ」


「は、ははっ!滅相もございません!」


俺が背中のアスカロンを丁重に下ろし、ビロードの台座に置こうとした、その時だった。


『嫌よ、マスター!私はあなたと離れたくない!』


アスカロンの、必死の叫びが脳内に響く。剣が、かすかにブルブルと震えて光り始めた。


(おいアスカロン、我慢しろ!これは仕事なんだ!)


俺は表情を一切変えず、内心でアスカロンを説得する。


『嫌!私のマスターは、あなた一人だけよ!私を他の男に渡さないで!』


(これはお前のための『卒業公演』みたいなもんだ!ここで立派な姿を見せて、ファン(公爵家)を安心させてやれ!)


この無言のやり取りは、公爵とベアトリスに、またしても全く異なる印象を与えた。


公爵「おお…!聖剣が、その魂を蘇らせてくれたフィン殿との別れを惜しんでいる…!なんと誠実で、腕の立つ職人なのだ!感動した!」


ベアトリス「見ろ…!聖剣が、あの男から引き離されるのを、魂で拒絶している!これほどまでに強固な精神的束縛マインドコントロールを施すとは…!この男、やはり危険すぎる!」


やがて、アスカロンはしぶしぶといった感じで光の明滅を収めた。俺が台座に剣を置くと、公爵は満足げに頷き、アスカロンを手に取る。

その瞬間、アスカロンはプイッとそっぽを向くように、その輝きをふっと弱めた。


「おお!なんと誇り高い聖剣だ。心を許した主にしか、その真の輝きを見せぬのだな!」


公爵は、アスカロンの塩対応すらも、ポジティブに解釈した。

ベアトリスは、その光景に、もはや頭痛を覚えるしかなかった。


「フィン・アッシュフォージ。君には、この礼として十分な報酬を渡そう。それから、どうだろう。この城の専属鍛冶師として、私に仕える気はないかね?」


「め、滅相もございません!」


公爵からのスカウトを、俺は慌てて固辞した。

これ以上、このややこしい親子と関わるのはごめんだ。

だが、そんな俺のささやかな願いは、この後、見事に打ち砕かれることになるのだった。

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