第13話:遺跡の守護者と勘違いの総力戦
俺が高らかに宣言し、遺跡の中心へと足を踏み入れた、その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!
大地が、いや、遺跡そのものが激しく震動し、石材が剥がれ落ち、俺たちの目の前でみるみるうちに巨大な石の巨人――ゴーレムを形成していく。
「遺跡の守護者か…! だが、呪いに侵され、完全に暴走している…!」
リオンが苦々しげに吐き捨てる。
ゴーレムは、俺たち侵入者を認識すると、その巨体を揺らし、巨大な石の拳を振り上げた。
「フィン、下がれ!」
師匠が俺を庇うように前に出る。
「面白そうじゃねえか。ワシの斧が、古代の石細工にどこまで通じるか、試させてもらうわ!」
師匠が雄叫びと共にゴーレムに斬りかかるが、ガギィン!という甲高い音を立てて、その刃は弾かれた。
「ちいっ、やはり硬いか!」
「フィン! 何とかできないのか! お前のその力で、あのゴーレムの弱点とやらが分かるのではないか!?」
リオンが俺に助けを求める。彼の目は「さあ、見せてみろ! 人知を超えたお前のプロデュース能力を!」という、やたらキラキラした期待が宿っているように感じた。
「弱点、ねえ…。あいつは敵じゃない。むしろ被害者だ」
俺の『魂魄の瞳』には、ゴーレムの魂の中心核に、『呪いの破片』が突き刺さり、彼に絶え間ない苦痛を与えているのが視えていた。
俺の呟きを聞いたリオンは、またしても勝手な解釈を始めた。
(被害者…? そうか! あのゴーレムも、呪いによって本質を捻じ曲げられた存在…! フィンは、その魂の悲しみを見抜いている! 彼のプロデュースは、敵味方の区別すら超えるというのか…!)
「よし、みんな! あのゴーレムを止めるぞ! ただし、破壊するな!」
「はあ!? 破壊せずにどうやって止めろと!?」
「いいから、俺の言う通りに動け! これは、俺たち4人のパフォーマンスの見せ所だ!」
俺は敏腕プロデューサーの顔で、指示を飛ばし始めた。
「まずリオン! お前はゴーレムの注意を引きつけろ! 狙いは関節だ!」
「分かった!」
「師匠! あなたは、奴の攻撃を真っ向から受け止めてください! あなたのパワーなら、奴の動きを止められる!」
「ほう、ワシを盾にするか! よかろう!」
「そしてハンナ! お前は、ゴーレムの足元に回り込め! そして、鍬で地面を掘れ! ひたすら掘るんだ!」
「うん、任せて!」
リオンの矢がゴーレムの注意を逸らし、師匠がその巨腕を戦斧で受け止め、動きを封じる。その隙に、ハンナが凄まじい勢いでゴーレムの足元に落とし穴を掘っていく。
「な、何をさせる気だ、フィン…?」
リオンが訝しげに呟く。
だが、数分後。その効果は現れた。
ハンナが掘った落とし穴に、ゴーレムの両足がズブリと嵌ったのだ。
巨体はバランスを崩し、ドッッッッッシーン!!! と、派手な音を立てて仰向けに転倒した。
「やった!」
ハンナが歓声を上げる。
「馬鹿な…あんな単純な戦法で、ゴーレムを…」
リオンは唖然としている。
(これが…フィンの言う『パフォーマンス』…)
リオンは戦慄した。
(彼は、我々一人一人の特性を完璧に理解している。私の精密な弓術を『陽動』に、ドワーフの剛力を『盾』に、そして村娘の規格外の土木作業能力を『罠』として機能させた…! そして、この三つの全く異なる能力を組み合わせ、巨大なゴーレムを傷一つつけずに無力化するという、この離れ業…!)
(恐ろしい…! この男の戦術眼は、もはや予知の領域だ!)
リオンが俺のことを、とんでもない天才軍師だと勘違いしている間、俺はゴーレムの胸部――コアクリスタルが埋まっている部分――によじ登っていた。
「よっと。さて、と…」
仰向けに倒れ、もがいているゴーレムの胸の上。そこには、ちょうど心臓の位置に、直径1メートルほどの円形の蓋があった。
俺は蓋をこじ開け、中にある赤黒いコアクリスタルと、それに突き刺さる『呪いの破片』と対峙した。
「待ってろよ、相棒。今、楽にしてやるからな」
俺はそう呟くと、両手をコアクリスタルに添えた。
「これから、お前のデビュー以来、最大の山場…『復活ライブ』の始まりだぜ!」




