年賀状はお年玉争奪戦の合図
なろうラジオ大賞7への投稿作品です。
ドタドタした日常のコメディです。ちょっとでも笑っていただけたら幸いです!
秋休みの旅行で買ったばあちゃんへの土産を手にオレはバスに揺られていた。
オレの入学式に会いに来てくれて以来だから、半年ぶりくらいか。
バス停からの道のり、思わず鼻歌が出た。
レースやリボン、花が大好きなばあちゃんは
華やかで明るくて、一緒にいるとこっちまで元気になるんだよね。
まぁ、だからこその欠点もあるんだけど。
ばあちゃん家の呼び鈴を押す。
ピンポーン。インターフォンに出たのは従姉妹の弘美姉ちゃんだった。
「あら、亨?なに?どうしたの?」
「や、旅行土産持ってきた。」
「そうなの?あがんなよ。お姉ちゃん、亨がお土産持ってきたって。」
自分の家でもないのにそんな言い方でオレを招き入れた。
手際よく文恵姉ちゃんがお茶の支度をしながら笑って言う。
「鼻が利くわね、ちょうどお茶にするところよ。」
「ばあちゃん、これお土産。温泉まんじゅう。」
「亨、よく来たねぇ。ありがとねぇ。嬉しい。」
まんじゅうを受け取ると、ばあちゃんはオレをぎゅっとする。
それを見て、姉ちゃんたちがニヤニヤした。
土産のまんじゅうと煎餅でお茶を飲む。
どうってことないお喋りで時間が矢のように過ぎた。
そろそろお開きにしようかと言うときにばあちゃんが突然
「来年の年賀状なんだけど、連歌にしない?」
と言い出した。
は?オレたち三人は目が点。オレはチラリと文机に目をやる。
あった。明智光秀の本。連歌ね、これだな。
有名だもんね。「ときは今 あめが下しる 五月哉」の歌会。
ふぅ、ばあちゃんの突拍子もないことするクセが発動だ。
これさえなきゃなぁ。
曰く、内容はこうだ。
来年午年年女の弘美姉ちゃんが五・七・五の年賀状をいとこ全員に出して、
それに続く七・七からいとこのグループLINEで干支順に作っていく。
で、その出来如何で、お年玉を賞金制にすると。期限は元日中。
一等三万円から始まって、二万、一万と下がり、ビリは百円。
「難しく考えないでさ、ただの言葉遊びよ。
気取った歌じゃなくて、らしさが出てる歌に高得点つけるよ。」
オレは、指折り十二支をいとこに当てはめていく。
「ちょっと待って!オレ、最後から二番目なんだけど!文恵姉ちゃんの前!」
三人揃って大反対した。反対はしたものの、結局押し負けた。
そして、正月。年賀状が届いた。
いの一番に弘美姉ちゃんのはがきを探す。
「梅が枝に まだ咲かぬかと 尋ねみる」
げ。頭に「う」と「ま」を織り込んできてる。ヤバい。
今、お年玉争奪の火蓋は切って落とされた!




