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2-1 遊園地編・幻の記憶

幻の記憶

朝日が差し込む中、翔は重い瞼を開けた。頭の中は昨夜の出来事で混乱していたが、ふと気づくと自分の部屋のベッドに横たわっていることに驚いた。


「昨日のホテルのことは…夢だったのか?」翔は呟きながら起き上がり、部屋を見回した。机の上には青い石もなければ、血の跡も何もない。全てが普段通りの光景だった。


翔は深く息を吸い込み、落ち着こうとした。「夢だったのか…?」しかし、昨夜の出来事があまりにも生々しく、ただの夢だとは思えなかった。


朝食を取ると、翔はいつものように学校へ向かった。美咲が校門の前で待っていた。


「おはよう、翔!」美咲が明るい声で迎えてくれた。


「おはよう、美咲。」翔は少し迷いながらも、昨夜のことを聞いてみることにした。「ねえ、昨日の夜、俺がホテルに行ってたの覚えてる?」


美咲は驚いた顔で翔を見つめた。「何言ってるの?昨日の夜は一緒に勉強してたじゃない。ホテルなんて行ってないよ。」


「でも…そんなはずは…」翔は困惑しながらも、美咲の言葉が嘘ではないことを感じ取った。


授業中も、翔の頭の中は昨夜のことがぐるぐると回り続けた。もしあれが夢だったとしたら、なぜあんなにリアルに感じたのか。そして、もし現実だったとしたら、なぜ美咲にはその記憶がないのか。


放課後、翔は再び美咲に尋ねた。「本当に、何も覚えてないんだよね?」


「うん、本当に。どうしたの?何かあったの?」美咲は心配そうに翔を見つめた。


「いや、ただの夢だったのかも。」翔は無理に笑顔を作り、話題を変えた。「今日はどこかに行こうか?」


「うん、そうだね。遊園地に行きたいな。久しぶりに楽しいことをしようよ。」美咲は提案した。


翔は少し驚いたが、美咲の提案に同意した。「そうだね、遊園地に行こう。」


二人は駅前で待ち合わせをし、遊園地へと向かった。駅から見える巨大な観覧車やジェットコースターが、二人の心を躍らせた。


遊園地に着くと、二人はまるで子供のようにはしゃぎ始めた。翔はしばしの間、昨夜の出来事を忘れ、楽しいひとときを過ごした。


しかし、遊園地の中を歩いていると、ふと奇妙な感覚が翔を襲った。まるで、どこか見知らぬ世界に迷い込んだかのような感覚だった。


「翔、どうしたの?ぼーっとして。」美咲が心配そうに声をかけた。


「いや、なんでもないよ。」翔は微笑みながら答えたが、その心の中には再び疑念が湧き上がっていた。夢と現実の境界が曖昧になりつつある中で、翔の運命は新たな展開を迎えようとしていた。


翔と美咲は遊園地内を歩き回り、楽しんでいた。ジェットコースターに乗り、大観覧車からの景色を堪能し、まるで日常の全ての不安を忘れたかのようだった。しかし、翔の心の奥底には、昨夜の出来事がずっと引っかかっていた。


「次はどのアトラクションに行く?」美咲が笑顔で問いかけた。


「そうだな…」翔が答えようとした瞬間、遠くから見覚えのある人物が近づいてくるのが見えた。神谷蓮だった。


「蓮…」翔は思わずその名前を口にしたが、なぜその名前が出てきたのか、自分でもよくわからなかった。


「翔、誰?」美咲が不思議そうに尋ねた。


「いや、ただの知り合いだよ。」翔は曖昧に答えながら、蓮が近づいてくるのを見つめた。


蓮が二人の前に立つと、冷静な表情で翔を見つめた。「昨日のホテルは滅茶苦茶だったな。」


その言葉を聞いた瞬間、翔の頭の中で何かが弾けた。突然、強烈な頭痛が襲い、翔は頭を抱えて苦しみ始めた。


「翔、大丈夫?」美咲が慌てて翔に駆け寄り、支えようとした。


「昨日の…ホテル…夢だったのか?現実だったのか?」翔は混乱し、苦しみながら言葉を絞り出した。


頭の中で断片的な記憶がよみがえり、ホテルの血の跡や蓮との対話がフラッシュバックのように現れた。しかし、それが夢なのか現実なのか、自分でも区別がつかなかった。


「君はまだ全てを思い出していないようだな。」蓮は冷静に言った。


「思い出せない…何も思い出せない…」翔は頭を抱えたまま、その場に倒れ込みそうになった。


美咲は必死に翔を支えながら、蓮に向かって叫んだ。「一体どういうことなの?翔をこんな風にするなんて!」


蓮は美咲の問いに答えることなく、静かに翔を見つめ続けた。「君が全てを思い出し、覚醒するためにはまだ時間が必要だ。しかし、その時は必ず来る。」


「やめろ…やめてくれ…」翔は痛みに耐えながら、蓮に向かって手を伸ばした。しかし、蓮の姿は次第にぼやけ、消えていった。


その瞬間、頭痛が和らぎ、翔は深い呼吸を繰り返した。美咲は不安そうに翔の顔を見つめ、そっと手を握った。


「翔、大丈夫?何があったの?」美咲の声は震えていた。


「わからない…ただ、蓮が言ったことが気になる。昨日のことが夢だったのか、それとも現実だったのか…」翔は疲れ果てた顔で答えた。


「とにかく、今は休もう。少し座って休憩しようよ。」美咲は翔をベンチに誘導し、二人で座った。


翔は美咲の支えに感謝しながらも、心の中では再び疑念が渦巻いていた。現実と夢の境界が曖昧になりつつある中で、翔の運命はさらに複雑な方向へと進んでいくのだった。

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