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1-4 新たな日常の始まり

暗闇の中で翔は時間の感覚を失い、ただ脱出の方法を模索していた。扉を叩き続け、壁を調べ、天井に向かって叫んだ。しかし、何の反応もなく、静寂だけが彼を包み込んでいた。


「どうして…どうしてこんなことに…」翔は自問しながらも、諦めるわけにはいかなかった。彼の心にはまだ強い決意があった。自分の力を信じて、この状況を乗り越えるためには、何か方法があるはずだと信じていた。


やがて、疲れ果てた翔は床に座り込み、呼吸を整えた。「冷静になれ…何か見落としていることがあるはずだ…」彼は再び部屋を見回し、何か手がかりを探した。


だが、時間が経つにつれて、焦燥感と不安が募るばかりだった。壁に爪を立て、力を込めて押し続けたが、何の変化もなかった。やがて、翔の体力も限界に達し、瞼が重くなってきた。


その時、突然部屋の扉が音もなく開いた。翔は驚きと同時に安堵を感じ、立ち上がった。「やっと開いた…」


しかし、扉の向こうに広がる光景を目にした瞬間、翔は言葉を失った。廊下には倒れたホテルのスタッフたちが無残な姿で横たわっていた。彼らの顔には恐怖と絶望の表情が刻まれていた。


「何が…どうしてこんなことに…」翔は震える手で壁に掴まりながら、ゆっくりと廊下を進んだ。


ホテルのロビーにたどり着くと、そこにはさらなる惨劇が広がっていた。豪華なシャンデリアが割れ、床には無数の血痕が散らばっていた。スタッフだけでなく、宿泊客たちも皆殺されていた。


「こんなことが…一体誰が…」翔の頭は混乱し、理性が崩れ落ちそうになった。


その時、彼の背後から低い声が聞こえた。「ようやく目覚めたか、佐藤翔。」


振り返ると、そこには神谷蓮が立っていた。彼の顔には微笑が浮かんでいたが、その目は冷酷だった。


「お前がやったのか?」翔は叫び声を上げ、蓮に向かって駆け寄った。


「そうだ。しかし、これは必要な犠牲だ。」蓮は冷静に答えた。


「必要な犠牲だと?人々の命をこんな風に奪ってまで…お前は狂っている!」翔は拳を振り上げたが、蓮は素早くかわした。


「君が力を覚醒させるためには、極限の状況が必要だった。それを理解してくれ。」蓮は静かに言い放った。


「理解なんかできるわけない!お前はただの殺人鬼だ!」翔は怒りに任せて再び蓮に向かって突進した。


しかし、その瞬間、翔の体は突然動きを止め、周囲の空気が一変した。彼の心の中で何かが弾け、全身に強烈な力がみなぎった。「これは…俺の力…?」


「そうだ、ついに目覚めたのだ。君の真の力が。」蓮は冷静に翔を見つめていた。


翔はその場に崩れ落ち、目の前に広がる惨状を見つめながら、涙が頬を伝った。「俺は…どうすればいいんだ…」


「君の力を使って、この世界を守るんだ。それが君の使命だ。」蓮は手を差し伸べた。


翔はその手を見つめながら、心の中で葛藤し続けた。これが自分の運命なのか?この力を使って本当に世界を守ることができるのか?彼の心にはまだ答えのない疑問が渦巻いていた。


翔はその場に崩れ落ち、周囲の惨状を見つめながら心の中で何かが壊れていくのを感じた。彼の中で抑えきれない感情が渦巻き、やがて理性の限界を超えてしまった。


「お前が…お前が全部…!」翔は叫び声を上げ、蓮に向かって再び突進した。


「冷静になれ、翔。君の力を使うには心の平静が必要だ。」蓮は避けながら言った。


「黙れ!お前に何がわかる!」翔の目は狂気に満ちていた。彼の中で何かが弾け、全身に力がみなぎった。だが、その力は制御不能なほど強大で、翔自身がそれに飲み込まれそうになっていた。


「佐藤翔、お前は選ばれし者として…」蓮が言いかけたが、その瞬間、翔の拳が彼の顔に直撃した。蓮は無防備に倒れ、地面に転がった。


「選ばれし者だと?こんなもの、俺は望んでいない!」翔は叫びながら、蓮に何度も拳を振り下ろした。そのたびに蓮は苦しそうな呻き声を上げたが、翔は止まらなかった。


「翔…やめろ…お前がこんなことをしても…」蓮の声は次第に弱くなっていった。


しかし、翔の理性は既に崩壊していた。彼の目の前に広がる血と死の光景が、彼をさらに狂気へと追いやった。彼は蓮を殴り続け、その体が動かなくなるまで止まらなかった。


やがて、翔は疲れ果ててその場に倒れ込んだ。彼の心の中で何かが完全に変わってしまったのを感じた。かつての自分はもう存在しない。今、彼の中にあるのはただ一つの目的だけだった。


「俺は…もう逃げない。誰が敵でも…全てを倒してやる…」翔の声は低く、しかしその中には決して折れない決意が感じられた。


翔は立ち上がり、血に染まった拳を見つめた。彼の心の中で新たな人格が芽生え、全ての恐怖と迷いを押しのけていった。これからの戦いに備えて、彼は完全に覚醒したのだ。


--- 第1章 完 ---



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