11-7
ぷち友情パワー編 開幕
「今度ばっかりは負けるかもしれねえな」
ほろ酔いの久志からぽろりと本音がこぼれていた。
(しまった)
こんなことを話すつもりじゃなかったのに。
「ふーん。じゃあ、これが最後の晩餐ってことか」
連蔵は居酒屋の店内をぐるりと見回しながらいった。
「ゲホッ。ゲホッ、ゴホッ」
篤は口に含んでいたビールでむせている。
(あわてて打ち消したらかえって怪しいよな)
変身している訳でもないのに柄にもなく冷静な判断が出来ていた。
「うん。そうなるかも」
久志はあっさりと認めてみせた。
「努力はしてみるけどさ」
「そりゃ死ぬ気でやってもらわんと困るな。でないと俺らが死んじまう」
連蔵は淡々としている。
「大変なことになったね。荒木君」
まだゴホゴホとむせながら篤がいった。
「大変なのはみんな一緒だろ。こいつがやられたら日にゃ、問答無用で俺たちゃ全滅なんだから」
「ああ。全滅だろうな。多分、何が起こったのかもわからないうちに。ピカッと光って、それでおしまいだと思うよ。痛くも痒くもないだろうな。請け負えるよ」
「んなこと保証されてもなぁ」
連蔵は隣りの篤の方を向いて、「なあ」と同意を求めるような素振りをしている。
「でも、『負けるかもしれない』ってことは、結局は勝つってことなんでしょ?」
「近いうちにもう一回行ってくる。所謂、最終決戦ってやつ。物騒なのもこれでおしまい。て、訳だから、前祝いにパーッとやろうぜ」と、久志は篤と連蔵に声をかけた。「これが最後になるかもしれない」という意識があったから。その前に二人に会っておきたかった。自分はもうすぐ殺されるかもしれないし、それは同時に巻き添えをくらう地球と人類の終焉を意味する。束の間でも嫌なことは忘れて、久志は少しでも楽しい時間を過ごしたかった。「そんなわがままをいえる身分なのか」と思いもしたが。
久志はビールをグビっとあおって、如何にももっともらしそうな顔をつくってから、何かしら言葉を選んでいる体で篤の質問にこたえた。
「正直九一ってとこ。多分、勝てるとは思う。勝てるとは思うけど、絶対とまでは言い切れない。今度ばっかりは今までと違って……。何しろ相手はラスボスだし」
荒木久志は元々それほど楽天的には出来てはいない。アドリブが得意ではないように。これがもしもの時―アルコールのせいで口がなめらかになりすぎた場合―の為に用意してきた精いっぱいの強がりだった。
「一〇パーはお前の巻き添えで人類滅亡ってことか。そいつは困ったな。もう少し何とかならねーか」
軽く値切るように連蔵は久志の面を覗き込んだ。
「ならねえんだよな。これが。いっくらポジティブに考えてみても、それ以上のイメージが湧いてこない。まったくヒデぇ話だよ。今までと違って一〇〇パー余裕で絶対勝てるとは言い切れない殺し合いをしなきゃならないんだから。
話が違う。
違い過ぎだよ」
もう少し続く




