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ぷちラブコメ 3
春野は予期していない質問に眼をぱちくりさせた。
「ん~。ちょっと違うような気はするよね。他のとは。何だか正義の味方っぽいよね。ていうかそうだったらいいなって。私だけじゃなくて、みんなそう思ってるんじゃないかな? それにきっとそうなんだよ」
「…うん……」
嬉しかった。そういうふうに見てくれている人が今ここにいる。しかもそれが潮花春野で目の前でそう言ってくれている。訳のわからないことに関しては、他のUnknownと少しも変わりのない自分に対して。もちろん、春野がそんなことは知る筈がないけれど。
この日、久志には春野に尋ねてみたいことが二つあった。一つは既に訊いた。もう一つは一つ目よりももっと関心のあることだった。
「出来るだけさり気なく」と思ったが、どうしてもそんな感じにはならなかった。女子相手にいいムードを演出するなどという高等スキルを久志が持ち合わせている筈がなかった。
久志は意を決してコーヒーカップを受け皿にガチャンと置いて尋ねた。
「あっ、あのさあ」
自分でも少し声が裏返っているのがわかった。一年前もそうだった。
「何?」
久志は俯き加減で告白した。
「……俺、君が好き」
「うん? 私も荒木君のこと好きだよ」
「そういう好きじゃなくて…」
「ああ…。ごめん。私の好きはそういうのとはちょっと違う」
「そっか。やっぱりそうなんだ…」
「でも、荒木君は好きだよ。だってすごくいい奴じゃん」
「そりゃどうも」
(またフラれちゃったな)
彼女に会うのはこれが最後になるかもしれない。
(それでも……。やっぱり……)
春野さんにはこれからもずっと笑っていて欲しい。
潮花春野には笑顔がよく似合う。
彼女の笑顔を守りたい。
ラブコメ編 完
あっさり失恋してラスボス戦というのって、あんまりない気がします。大体は両想いなのを確認してラスボス戦ばかりの様な。
人生そんなに上手くいかないのでは?
それでもって、ラスボス戦に勝ってハッピーエンドとなると尚更に。




