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gift  作者: 荒馬宗海
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11-4

ぷちラブコメを少々


大学近くの喫茶店で久志は潮花春野と待ち合わせをしていた。先にやって来て奥の席についたのは久志。十五分ほど遅れてやって来た春野を確認し、「おーい、こっちこっち」と手を振った。春野は相変わらず就職活動で奮戦しているらしく、この日もスーツ姿だった。

「いつも忙しそうだね」

「そうでもないよ」

「悪かった? 呼び出したりして」

「せっかくの荒木君のお招きだしね。来ない訳にはいかないでしょ。遅れちゃったけど」

 ウェイトレスに春野は紅茶を注文した。

「調子はどう?」

「ん? 最近は良い感じだよ。また内定が取れたし。一番行きたいとこも最終面接まで残ってるし」

「へー。そりゃ凄い」

「それよりそっちはどうなの?」

「ダメ。全っ然ダメ。壊滅状態だよ」

「それじゃ、もっと頑張らなきゃダメだよ。学歴とかなんかで足切りとかされちゃったりするけど、熱意とか気合いとかは結構大事だよ。私なんかそれだけでなんとかなってるって気がするもん」

(春野さん。やっぱりいいな)

 まだ知り合ったばかりで客観的に見られている頃からそうだった。

ある日、西洋史ゼミの女子達の会話に聞き耳を立てていたら、春野はいっていた。化粧に関しては、「あんなの早起きして頑張ったって、どうせウチに帰ったらおとすわけじゃん。私なんかソッコーで落として部屋着だし。早起きなんかしたくないし、少しでも寝てたいし、第一メンドいよ。あんなのちゃちゃっとやれる範囲でやっとけば十分じゃん」、ヘアースタイルがショートボブなのは、「早く乾くし、手入れも楽だし」という感じの言葉が聞こえてきた。それから、「一体何時に起きているの?」と訊かれたのに対しては、「学校に行く二十分前くらいかな」と答え、他の女子一同に、「うそでしょ!」「信じられない!」「あんた、ほんとに女子大生?」「それって男子だよ。それも中坊の男子じゃん!」と引かれていた。更に追加とばかりに、「じゃあ、シャンプーとかリンスはどこの使っているの?」と訊かれたのに対しては、「とくにブランドとは決まっていないよ。切れてたら石鹸とかだし、石鹸もなかったら、近くの百円ショップで買ってくればいいんじゃないの」と答えて、「ウソでしょ!」「信じらんない!」「あんた、女子大生でしょ!」「それって男子中坊でしょ! それも坊主アタマで部活に青春かけている皆さんだよ!」と更にドン引きされていた。これらのコメントを受けて、「だって、お母さん、『高級品でも百均でも入っている成分は、あんまり変わらない』って言ってたよ」と発言したのに対しては、「女の子なんだから、もっとちゃんとしようよ」「女の子なんだから、もっとちゃんと気にしようよ」「女の子なんだから、もっとちゃんとコスメとかにお金かけようよ」「それよりも、石鹸って…。ボディーソープどこいっちゃってるの?」と遂には呆れられてさえいた。それから、「あんた、もしかして、そのチャチャっとやってる化粧のことナチュラルメイクだと思ってない?」「えっ? 違うの? かなりスッピンだよ。わたし」「ウソでしょ!」「マジで言ってんの!」「ただの手抜きがナチュラルメイクなワケないでしょ!」「アレはあくまで自然っぽいんであって…」「決してスッピンではなくて…」「本来、時間も手間もかかるもんだし」「あれはあれでそれなりの技術が…」「いや、それどころか結構高度な…」「いやいや、本格的なやつともなると相当な高等テクニックを要する…」とかいう会話が後に続いた様な憶えがある。

(要は、ナチュラルメイクってのは、特殊メイクの一種だって話をしているのか? オンナって怖い)

 一年以上前のことである。その後、本人によると、「就職活動を開始するにあたり身だしなみに気をつけるようにした」らしい。それに対する周囲の反応は「やれば出来るじゃん」「見違えちゃった」「やっぱ映えるね」「素材は良いんだから」だそうである。おしゃれとかファッションに関してのことだとはわかるが、久志からすれば、そこまで変わったようには見えなかった。だって「もとからかわいい」のだから。


もう少し続く

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