人工ボイド
全くこの話とは関係ないんですが…、
恐怖から逃げるように焼酎をあおっているうちに、やがて久志は眠りに落ちた。
久志は夢の中で“声”を聞いた。
〈永きにわたる連盟との戦争は遂に我ら連合の勝利によって終決を見た。我々もまた“光”を手にしたのだ。短い時間ではあったが、“光の主”たる君をそれなりの施設の下に置けたこと、それからトルベロ・スロルカの死を賭した奮戦、何よりも彼が送ってきた人間と融合していた“光”。おかげで“光”の何たるかを幾許かを知り得た。それでも謎だらけの代物であることに変わりはないのだが。それでも、我々は本当の意味で遂に“光”を手にしたのだ。未だに限られた者にしか使いこなせない代物ではあるが。新たに“光の主”と成り得た者は私を含めて十二人。たった十二名ではあるが、戦争を終結されるにはそれだけで十分だった。君も知ってのように、それこそが“光の主”たる者の実力だ。十二人の“光の主”によって連合は連盟に勝利した。我々は連盟の根絶に成功したのだ。そしてその功績によって我々は新たな称号を得た。それこそが、天使。このことは同時に君の呼称を決定することでもあった。曰く、堕天使。戦争がこのようなかたちであれ終結したことに我々は君に感謝すべきなのであろう〉
〈何がいいたい!〉
〈我々は君と君たち人類をこのまま放置する訳にはいかないということだ。堕天使よ。私は天使長ナデイズ。連合を代表して最後にもう一度だけ君に請う。我々のもとへ来たまえ。君にはそれだけの力がある。それだけの才能がある〉
〈「来い」というのは人類を見捨てろということか? それなら答えは変わらない! 俺はこの星を守る!〉
〈君の才能はあまりにも惜しい。だが、ならば仕方があるまい。我ら残る天使十一名は君に対して決闘を申し込む。時は三日後の正午。決戦の地はノーアフテスイデ宇宙域〉
久志の脳裏にイメージが送られてきた。それは連合と連盟が激突したことによって生じた、どこまでも広大な宇宙空間の虚――人工ボイドとでも謂うべ人間の醜さの果て――だった。もっとも、そのスピードに上限のない、“理の外にある者”――“光の主”同士の決闘の場としては、たとえその広さが無限であろうと同じことなのだが。
〈互いにその実力を存分に解き放ち、雌雄を決しようではないか〉
〈わかった〉
久志は目を覚ました。
全身が冷たい汗にまみれていた。
変身した主人公。白く発光して輪郭が曖昧なのですが…。
要は、ほぼ(リクルート)スーツ姿か、(部屋着)ジャージ姿なんです。全然カッコよくありません。アメコミとかのヒーローと比べたら可哀想なくらいに見栄えがしません。白く光っていなかったら、本当に只の人です。本編の主人公。
もう間近に迫っているラスボス戦でさえ、勝負衣装とかは程遠い、近くのコンビニに行く様なカッコウで参戦します。
相変わらず、ピカピカ白く光りますが。
最後ですから、いつもより余計に。




