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gift  作者: 荒馬宗海
90/107

10-5

主人公は怪物にも化物にも成り果てたくはないのです。

 “光の主”は地球に向かってワープした。

「カプセル内の“光”はどうなっている」

「そのままです。“光”に変化はありません」

「新たに“光”を、自力で召喚したというのか」

それは久志がワープアウトするのとほぼ同時だった。

 砲撃艦隊の旗艦のオペレーターが叫んだ。

「前方に空間の歪み。彼です! “光の主”が来ます! 次いで後方に空間の歪み。艦影一〇〇〇。特務艦隊本隊、包囲陣形でワープアウトしてきます」

 砲撃艦隊司令官は即座になにが起こっているのかを悟った。

「カウントダウン中止。照準そのまま。全艦主砲即時発射」

 副官がいった。

「しかし、それでは…」

「構わん。どうせあの怪物を狙ったところで当てられはせん。ならば向こうか飛び込んできて頂くとしよう。我が艦隊の全火力、存分に味わっていただくとしよう。それ以外に母星を守る術は」

 五隻の砲撃艦から同時に主砲が発射された。五つの光の奔流が青い水の惑星を目指す。

「全て受けきらないとダメだ! でないと終わりだ!」

 久志は地球と砲撃艦の間に割って入り、自らを光の奔流に対峙させた。

「少し防ぎ損ねただけでも終わる! 生態系が破壊される! 街が壊される! 沢山の人が死ぬ!」

 集中砲火に対する的として自分はあまりに小さ過ぎる。

「そんなのはもう嫌だ!」

 久志は自らの体を爆発的に巨大化させて、その身を敵の砲撃に晒した。

 破壊光線の収束が久志の胸部に炸裂した。飛び散った閃光が辺りの宙域を支配する。

「怪物はどうなった?」

「わかりません。センサー未だに回復していません」

 光の渦は少しずつおさまりつつある。

「センサーに感。“光”です! “光の主”です! それにしてもこの巨大さは……」

 そこでオペレーターの声は途絶えた。

 破壊光線の全てを受けきった久志は返す刀で右腕を薙ぐように振り抜き、白い光の洪水を発した。放たれた破壊光線の波は五隻の砲撃艦を含む特務艦隊本隊の全てを飲み込み一瞬にして壊滅させた。

 久志は元の大きさに戻っていた。だがまだ臨戦体制を解いてはいない。

(敵はまだいる)

 “光”の本能の部分で察知していた。

「まさかな」

 宇宙の闇の向こうから声が聞こえてきた。

「想像を絶するというのはこういうことを言うのだろう」

 敵の姿が明らかになってきた。

「実際目の当たりにしてみると凄まじいものだ」

 正面中央には全身を甲冑に包んだ、三つの顔と六本の腕を持つ者が立っていた。それが変身したトルベロ・スロルカであることは明白だった。周囲には人型をした無数の岩石の集合体が主人に付き従うように展開していた。

 久志は敵を客観的に把握していた。

(生命体反応は一つのみ。あとの百体はコアを中心に超硬質の岩石によって構成された、主からの精神波によって操られる人形にすぎない)

「砲撃艦五隻の集中砲火をくらいながら、全くためることなく放った一撃で、特務艦隊を一瞬にして薙ぎ払うとは……」

その間にも久志は敵の戦闘力を見切っていた。

〈取るに足りない〉


人でなしにも人非人にも成り果てたくないように。

人外に成り果てたくはないのです。

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