10-1
ちょっとの間、カテゴライズされている通りの
大カテゴリー SF
小カテゴリー 宇宙
っぽい話になります。
10
指定された宙域にテレポートした久志を待ち受けていたのは予想もしていなかった大艦隊だった。一瞬「罠だったか」という考えが脳裏を過ぎったが、“内なる声”は冷静にそれを否定した。
〈敵意は無い〉
人にはないインターフェイスを通して、イメージとメッセージを受け取った。イメージは旗艦らしい戦艦とその内部の謁見にでも用いられそうな広間の映像であり、メッセージは「そこに姿を現して欲しい」とのことだった。
久志は指示に従って所定の場所に降り立った。周囲を完全に包囲されていた。「一斉に襲ってくるつもりか」と身構えたが、杞憂だということも同時に察知出来た。危険は全く感じられない。殺意はゼロだった。
久志は変身を解いた。自ら率先して武装を解除したのだ。
(俺はここに殺し合いをする為に来た訳じゃない)
改めて辺りを見回した。久志にとっての最大の驚きは、ことここに至っても、やはり今、自分を取り囲んでいるのが、恐ろしいほどにチキュウ人だということだった。そこには水色の肌の総統もいなければピンクの髪のお姫様もいない。正装と思しき制服こそ映画かなにかに出てきそうな感じだったが、それを着ている人間はあまりにも普通で、都心に行けばその辺で眼にしそうなチキュウ人でしかなかった。
しかし一方では「何かが違う」とも嗅ぎ取っていた。
(これが進化した人類が行き着く先なのか……)
冷や汗をかいている久志に、そのうちの一人がゆっくりと近づいてきて、静かに手を差し延べた。
「ようこそ。“光の主”よ」
久志は握手に応じた。一見したところ、彼もまた物腰の柔らかそうなただのチキュウ人にしか見えない。だが、やはり違う。違うのだ。瞳に宿る光、全身から醸し出す雰囲気、そういった曖昧なものが決定的に異なっているとしか感じられない。
(変身してないとはいえ、“光の主”だからそんなふうに感じるのか?)
「私の名はトルベロ・スロルカ。この特殊任務特別編成艦隊の総司令官の任を仰せつかっている者です」
「あ、荒木久志……です」
「我々は貴方を歓迎し敬意を表します。“光”を返還する為に、遥々ここまで赴き、武装を解き、こうして握手に応じてくれた貴方に対して」
「…拾った物を元の持ち主に返すのは当然のことですから」
十円玉や百円玉、そのくらいまでなら交番に届けなくてもいいような気がしてしまう。もしかしたらネコババしてしまうかもしれない。しかし拾ったものが“光”ではあまりにもものが違い過ぎる。責任も罪悪感も。もう負いきれないし、もう耐えられなかった。
まあ、舞台が地表から離れたってだけなのですが。




