続・鬱 3
続・鬱 3
久志は遮光カーテンに閉ざされた闇の中で格安の巨大ペットボトルの焼酎を傍らに置いて佇む。
「対象を的確に認識出来れば、破壊出来ないものは何もない」という解釈も実際は微妙に違っていたこともわかっていた。現実は「対象を的確に認識出来れば、それのみに限定した上で、破壊出来ないものは何もない」であったのだ。「ターゲットを正確に把握していなければ、恣の破壊は不完全な限定の中には留まらない。その余波は限定したはずの外にも及ぶ」――これが真実であった。
今のところはまだ、“光”は、才能は、久志の意志による完全な支配下にある。しかし、もし少しでも手元が狂ったりしたら、もしもコントロールし損ねていたとしたら、一体、どういうことになるのか? そう考えると恐ろしくて堪らない。果たしてこのままいつまでも御し続け得るものだろうか? あまりの禍々しさに恐怖しかない。
久志にとってこの世界を――この宇宙全体を消滅させることなど造作もない。その気になれば一瞬にしてこの世は消える――完璧に滅び去る他はないのだ。「手にしている物を放す」、そんな感覚で全ては終わる。終わってしまうのである。
「…………」
そんな己に対しては嫌悪しか抱きようがない。
「こんなもの……」
こんな才能は呪いでしかない。
それには何一つ制約のない、何者も制限を加えることなど能わぬ、際限なき、完全かつ完璧なる自由である。ただしそれは殺戮と破壊に於いてのみの。それは主の精神をこの上なき暴虐の磔刑に晒す――
堪らなくなり逃げるように枕元に常備している安焼酎をごくごくとあおった。
「も、もしも、俺が神だったとして、たとえそうだったとしても、そいつが『無知蒙昧』で『盲』じゃないなんて誰がいい切れる? もしも、『造物神』並みの出来損ねだったとしたら、一体どういうことになる? 破壊の衝動を抑えきれかったりしたら、この世界なんてものは呆気なく…………」
そして、もっと恐ろしいのは…………。
この日も久志は平和だった頃には考えられないほどに酒を飲んでいたが、まるで酔えてなどいなかった。やはり脳みその芯の辺りは氷のように冴えきってしまったままだった。凍りつき軋むような痛みを感じないではいられないほどに。
久志は自嘲する。
「破壊神? 無双? 無敵? 最強? こうなったらもういっそ、異世界にでも行っちまえってか? よくもまあ、ありきたりもいいとこのライトノベルだこった。それでもって、造物神? それでいて、至高神? まだ足りなくて、全知全能の神? 挙句の果ては、存在せざる神? まだ盛るか! まだ盛るつもりなのかよ! 何なんだよ。何なんだこのタチの悪い重度の厨二病は。一体どこまでこじらせなきゃならないだよ。
……何だって俺がこんな目に…………」
いつの間にか俯いて嗚咽を漏らしていた。




