突然変異
優生学と遺伝子操作からの……、
階級の時代。それはまた宇宙開発が本格化した時代でもあった。人類は高度な科学技術によって宇宙進出を果たし、その勢力圏を急速に拡大させていった。持てる者は我が世の春を謳歌し、持たざる者は辛酸を舐め続ける。前者はさらなる宇宙開発とそれによってもたらされるさらなる富と繁栄を確信し、後者はそれを必然として受け入れる他はない。彼らの未来は既に確定したかのようであり、そこに疑う余地などどこにもないように思われた。しかし階級は崩壊するのである。突然変異体の出現によって。
それはまず持たざる者の中から発生した。宇宙開発の尖兵として無数の未知の物質や宇宙線に晒され、さまざまな過酷な環境下、末端の労働に従事せざるを得ない者は当然のことながら社会的弱者であった。異能・異形の者たちはまずそのような人々の中から誕生していった。
ミュータントの出現当初、その存在は闇から闇へ葬られていったのだが、ある時点を境に、それはまるで人類という種に予め備わっていた次の進化の段階へのスイッチがオンになったかのように、その数は著しく増加し、その能力は遥かに多種多様かつ強力なものとなっていった。やがて彼らの存在は秘匿出来ないものとなり、公然と怪物・化け物と蔑まれ、差別・迫害を受け、抹殺されていった。
突然変異体は彼らの、当時の、とはいえ既に相当高いレベルにあった遺伝子工学の技術をもってしても得られなかったレベルの知性や運動能力をもつ者から、特殊な超能力を有する者まで、多種多様な資質を備えていた。そのようなミュータントが主に開発途上の宙域のそこかしこから、ほぼ時を同じくして次々と出現したのである。必然として彼らミュータントたちは自衛の立場から結束し、突然変異体連合を結成する。やがて彼らは階級の打破を唱え、既存の社会との戦いに突入してゆくこととなった。
ミュータントはその能力と彼ら自身が開発した、自らの特性を戦闘力として変換・増強させるこれまでにはなかった兵器―融合型兵器によって、圧倒的な力を示した。「このままではこちらが滅ぼされる」。ミュータントの実力と反攻に恐怖した支配層は突然変異体連合に対抗するために彼らもまたそれまでになかった力を獲得し活用することを選択する。生き残らんがために。こうして支配層はミュータントとその兵器の研究に邁進し、その結果を反映させることとなった。ここに連盟が誕生する。生き残らんがために。それは連合の側も同様であった。彼らもまたさらなる力を追い求めた。
こうして人類は二つの陣営を形成することとなった。間もなく、両陣営の力は拮抗し、戦線は膠着状態を呈することとなる。しかしその間にも、彼らの科学技術は異常な発達を遂げてゆく。戦火は外宇宙へ外宇宙へと開発を兼ねて拡大の一途を辿った。その先々で無数の知的生命体と遭遇することとなったのだが、その大半は彼らから見れば下等生物であり、払ったついでに根絶させられていった。
突然変異というお話でした。
7−1、7−2は。
8はというと……。




