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〈私は別にそのようなことを言いたくて君に接触をはかった訳ではない。君の立場、君の理屈からすれば、なるほど、先の戦闘行為は必然だったのかもしれない。我々も君たちもそれなりの犠牲を払った。しかしそれはもう済んだことだ。そのことについてこれ以上どうこう言うつもりはない。ただ…〉
〈ただ?〉
〈これだけははっきりしている。繰り返すが、“光”は元々君のものではではない。我々のものだ。我々に返還することが道理ではないかね?〉
〈もし俺が“光”を返したとしたら、その後、お前達は……〉
〈そのことについても私は既に明言している。「我々は君の敵ではないし、そうなるつもりもない」と。若しも何者かが君たちの惑星に侵攻するようなことがあれば、その時は必ずこちらでそれらを排除することを誓おう。但し、交換条件という訳ではないが、こちらとしても君に協力して貰いたいことがある〉
〈協力?〉
〈君は“光”を纏いし最初にして唯一無二の存在だ。君には是非とも我々の研究に協力して頂きたい。無論、君にはそれなりの報酬と待遇を約束しよう。君にとっても、君たち人類にとっても、決して悪い話ではあるまい。それだけの見返りは用意出来る筈だ。そして、もし君が更に積極的に我々に手を貸してくれるのであれば、是非とも戦士として我々と共に戦って頂きたい〉
〈戦う……〉
〈君の類稀なる才能は我々の世界でこそ生きる。実際、今、君が属している社会にその才能は必要かね? 正当に評価される余地などあるのかね? 称賛されることなどあるまい。 寧ろ、後ろめたく、ひた隠しにしなければならないものではないのかね? 君のその客人たる才能は〉
〈そ、それは……〉
図星をさされた。
〈それは今の君にとっては十字架でしかあるまい〉
〈…………〉
〈君の居場所はそちらにはあり得ない。君の才能はこちらにしかありはしない〉
久志はなにもいえなかった。
〈我々の元へ来たまえ。“光の主”よ〉
次の瞬間、極限まで濃縮されたような情報の塊が一気に久志の頭の中に流れ込んできた。それは彼らにとっては取り立てて特殊な情報伝達方法ではないのだろう。だが、“光の主”としては受け止められる窓口を持ってはいても、普通の人間としてそんな回線など使ったことなどない久志にとって、それは慣れてなかっただけでなく鮮烈かつ強烈な体験だった。
!
久志は“ひとつのこと”を認識させられた。
「な……」
久志は口を噤む。
躊躇いがちながら、ようやく口を開きいた。
〈…考えさせてくれないか? 少し考える時間が欲しい……〉
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