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gift  作者: 荒馬宗海
52/107

4-14

とある省庁の前でデモが起きているそうですね。

「すっげーな。すっげーよなあ。いくらなんでもすご過ぎだろ。最後の独身大物女子アナ。きっとこういう人間からすれば、月並みな承認欲求なんてものはハナクソなんだろうな。大抵の人間はそれですら満たされることはないのに」

 こういう人間も現実にいるのだ。

「はあー」

 久志はため息を一つ吐いた。

「でもねえ、下界にだって人はいるんだぞ。っていうか、そっちの方が圧倒的に多いんだし。下々の人間がいなけりゃ、そもそもお前らの優雅でリッチな生活なんてもん、成り立ちゃしねえんだぞ」

 至極真っ当なことを口にしているつもりなのだが、何だか負け犬の遠吠えのような気しかしない。

「庶民は苦労してんだぞ。上澄みの偉い連中には、そんなこと皮膚感覚じゃ解かりゃしねえだろうし、解かろうともしねえんだろうけど。この国の政治家が優秀だったとしたら、今のこの国のこの体たらくは、ないんじゃないのか? 人気女子アナは、『こんなことがありましたとさ』てな感じで、ルックスの良さ見せつけて、原稿読んでりゃ良いのかもしれないけど」

 文句はまだある。

「官僚とかは何とか出来なかったもんか? 国民のために。こっちの方――国家の側ではなく、国民の側――を向いて仕事をしているようにはとても見えないぞ。官邸の意向ばっかり忖度しやがって。文書の改竄? 文書の廃棄? それって国民に対する背信行為だろ。“省庁の中の省庁”の中でもかなり身分の高いエリートが、証人喚問じゃ、議員秘書でもあるまいに、尻尾切りの尻尾に甘んじていやがったぞ。大蔵省なんて、事務次官のセクハラを省ぐるみで露骨にもみ消そうともしやがったぞ。それでもって、『心当たりのある者は名乗りでろ』って。被害女性の人権は無視か? そんなのその記者に対する国家権力によるパワハラだろ。どんだけ旧態依然としてるんだよ。もうすぐ二十一世紀だぞ。どんだけとち狂ってんだよ」

 ぼろぼろと口からこぼれた言葉が、ますます負け犬の遠吠え感を、強調しているような気がした。

 “省庁の中の省庁”――実は色々出来たり、していたりする。どちらを向いていて、誰が誰を忖度しているかというと……。

 そして、それから彼の省庁は再編に伴い、間もなく“改名”をされるのだが、それ以降も、数十年経とうとも、景気が良くなる事など、国民の生活が楽になる事など、一度として無かったという。


元・大蔵省…。

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