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gift  作者: 荒馬宗海
51/107

4-13

(考えてみれば、“長老”っていうのは、世紀のビッグカップルのそのまたさらに上にいる連中なんだよな。下界の庶民から見れば、超上級国民ってところか。おそらく、あいつら自身の認識としては、超超上級国民くらいのつもり、いや、超が二つじゃ、まだまだ全然足りねえって感じなんだろうな)

“長老”は政界に多大な影響力を及ぼす。彼らは世間から乖離しているような特殊な世界――政界における成功者であるわけだが、その常識は自身の成功体験によって形成されたものである。ただでさえ特殊な世界に生き、そこで特別な存在へと成り上がってゆく過程でより浮世離れした存在となっていったのは想像に難くない。

 そういった経験の蓄積によってかたちづくられ、そのような世界で何十年も生息してきたのであれば、そうして培われた選民意識からすれば、一般社会の常識などというものは通じないどころか、むしろ侮り蔑ろにしている感すらある。自分の常識――国民一般における非常識――に凝り固まった大物、それも大物であれば大物であるほどその傾向は顕著であり、そのような人物ほど大きな発言力をもち絶大な権力を手中にしているのだから、自らを「上級国民の中の上級国民である」と、当然とばかりに自負しており、そこから漂う腐臭や醜悪さなど、当の本人がそれが何だか解らないのだから、とうの昔から隠しようがなく隠そうともしない。

 そのような人物こそが、一般国民の目には、それこそ、“老害”としか映ってはいないのだが。

 その典型こそが“長老”――大物政治家の類である。尊大かつ傲慢な言動が目立ち、時代錯誤な偏見を信じて疑っておらず、思考は硬直化しており、一般世間に対応出来るような柔軟性はとうに失われている。失言(国民軽視、女性蔑視、人種差別、etc)が絶えず、その度に各方面から非難されるのだが、そもそも、「どうして自分が責められなければならないのか」「自分のどこが悪いのか」すら理解出来ず、解かろうともしないし、するはずもなく、わけがない。自然、たとえ謝罪会見を開いたとしても、かえって逆ギレして強面で凄んで見せさえする始末である。

 国会議員というものは議員歴が長くなれば長くなるほど国家に貢献したという理由で、勲章が授与され、税金で銅像がつくられ、後の世までその功績が讃えられることになっている。大物政治家、それも“長老”クラスともなると、国葬によって弔われることさえあるのだが、その費用は全て国費――税金で賄われ、それを決定するのは国民ではない。

 世紀のビッグカップルの記者会見のニュースを見て、久志はこう呟きもした。

「エグっ。女子アナというのもトップともなると、ガチでエゲつないな」

普通ならいくら人気女子アナとはいえ、大抵は三十路前後で手をうつ、結婚するものである。もちろん、変わり者でもない女子アナが押さえるのは相当な好物件ではあるのだが。それなのに、“女子アナ界最後の大物”は、アラサーどころかアラフォーまで引っ張った。独身を貫いた。無論、見事なまでにセレブばかりと数々の浮名を流し、それこそ貴族のように何かと華やかな独身生活をエンジョイしていたようだが。そんな大物女子アナが最終的に伴侶に選んだのがまさかこうくるとは。「ファースト・レディー(「未来の」ではあるが。ただしほぼ確定であろう)にしてくれるくらいの男でなければ、自分とは釣り合わない、結婚相手に値しない」とすら考えていたとでもいうのか? そこまで自分に自信を持っているというのか? そこまで自分というものに自信を持てるものなのだろうか?

ここまでくるともはや感服する他はない。何という自己肯定感であろうか。


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