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まさかそんな事を尋ねられるとは。
(それが何の関係があるってんだ? この会社と)
あわあわとアドリブ力のなさを露呈してしまいそうになったが、ここからはいつもの久志とひと味違った。
(あっ、そうだ。人型白色発光体って、要は俺のことじゃん)
気づけたおかげで間をおかずに言葉が出てきた。
「味方だと思います。人類の。地球の。正義の。世界の平和を守っているのだと思います。私の眼にはそのように映っております。私にはそのように行動しているとしか見えませんが」
「では、何故世界を守るのですか?」
即答出来る質問だった。
(何故って、そりゃあんた)
らしくないスムーズさですらすらと答えてみせた。
「彼でなければ誰も、人類を、地球を、守れないからです。Unknownを撃退出来ないからです。やるしかないからやっている、そういうことではないでしょうか?」
「そうですか」
試験官はサラサラと書類になにかしらを書き込んだ。
「お疲れ様でした」
(えっ?)
「今日はわざわざ弊社の第一次個別面接試験におこし頂きまして、まことに有り難う御座いました。結果は後日お知らせ致します」
(もう終わり?)
心とは裏腹に、久志は起立してペコリとお辞儀をしていた。
「ありがとうございました」
久志はそのまますたすたと二十一番ブースを後にした。カップラーメンが出来るよりも早く彼の面接は終わった。短いだろうと思ってはいたが、まさかこれほどまでに短時間で終了とは。
「こんなんで何が解かるってんだ? バイトの面接だってもっと時間かけるぞ」
久志は会場のビルの外に出たところでは威勢よく毒づいたのだが、駅に向かって歩いているうちにそんな強がりも続かなくなっていった。
「あの受けこたえじゃダメってことかよ。何て書き込みやがったんだ。俺の書類に」
その時頭にパッと一枚の書類の画が浮かんだ。そこには赤ペンで「無個性。独創性に欠ける」と記入され、大きくバツ印がつけられていた。それには見覚えがあった。荒木久志のエントリーシートだった。それが本物だということも何故だかわかった。
「俺の地元の信金ってのはそんなにイマジネーション豊かじゃなきゃ勤まらねーのかよ! こっちの事情も知らねえくせに! 正真正銘ご本人様が直々に答えてやったっていうのに! だいたいお前らに何がわかるってんだ! 何にもわかっちゃいないくせしやがって! 本人の気持ちになってみろってんだ!」
吼えてはみたものの、いつの間にか足取りは重くなっていった。




