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gift  作者: 荒馬宗海
40/107

4-3


その日の企業説明会の会場もだだっ広かった。どこかの町の体育館か公民館を連想させた。そこには入学式か卒業式のように整然と大量のパイプ椅子が並べられていた。招待状にあったのは「何月何日何曜日の何時に何処其処に来い」という文章と最寄り駅からの地図だけだったから、てっきりいつもの書類審査なしの企業説明会だと久志は思い込んでいたのだが。

(何か違うみたい。どうやら会社の説明とかはなしでいきなり個人面接でもするつもりらしい)

 四方の壁沿いには電話ボックス二つ分くらいの幅に区切られたブースが全部で四十四。各ブースにはそれぞれ面接官っぽい人が一名に机。対面にはパイプ椅子が一脚。企業説明会につきもののビデオやスライドの映写装置の類はどこにも見当たらない。

(個別で面接してくれるだけありがたいと思うべきなのか。どう見ても「とりあえず数だけやっつけとけ」って感じなんだけど)

 この時久志の脳裏に浮かんだのは、マスクをした初生雛鑑定師がひよこの肛門を開いて手早くオスとメスを分別して、右の箱へ左の箱へとひょいひょい放り込んでいくさまだった。

 久志は自分の描いたイメージに正直やりきれなかった。

(所詮、就職試験の一次なんてこんなもんなんだろうな)

と、すぐに自分の考えを改めもした。

(でもなあ。あれはニッポン人にしか出来ない相当特殊な技能らしいんだけど、だからといって、全人格に対する評価を同じ調子でぽんぽん出来るニッポン人がいるってことにはならないだろ。しかもこんなに沢山)

この辺は長引く不況による超売り手市場の悲しさだろうか。

午前八時四十六分。マイクを手にした額の広くなった男が学生たちの前に立った。

「えー、それでは早速これから個人面接を行いたいと思います。順番にお名前をお呼びしますので、お名前を呼ばれた方は、それぞれ指定されたブースに移動して、各自そこで面接を受けて下さい」

 額の広い男は単刀直入に本題に入った。

「それでは、高橋庄平さん」

「はい」

「一番のブースへ行って下さい」

「大泉明さん」

「はい」

「二番のブースへ行って下さい」

時計をチラッと見た。時刻は午前八時五十二分。久志にお声がかかったのは丁度その時だった。

「荒木久志さん」

「はい」

「二十一番のブースへ行って下さい」

 二一と印刷された紙の貼られたブースに行って、パイプ椅子の脇に立った。

「どうぞ、着席して下さい」

 試験官の言葉を待ってから席に着いた。

「それではまず、ご氏名、ご年齢、出身大学、及び学部・学科を順にお願いします」

「名前は荒木久志と申します。年齢は二十一歳です。啓明大学文学部史学科に現在在籍しております」

 まずは落ち着いていえた。軽く安堵する。

 あらかじめ提出しておいた書類から顔を上げて試験官が口を開いた。

「それではまずこちらから質問させて頂きたいと思います。最近、巷を賑せている例の人型白色発光体。あなたはあれを何だと思いますか? どのような存在だと解釈していますか?」

(へ?)

 いきなり出鼻を挫かれた。

 話が違う。


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