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gift  作者: 荒馬宗海
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1-3

 残念ながら、今現在の状態は「軋り音がする」、「軋んでいる音が聞こえてくる」という状態を通り越してしまっている様な気がします。これでは……。

 久志は内心焦っていた。

(まずい。まずいぞ。ダメじゃん。このままじゃ絶対ダメじゃん)

久志は頭をフル回転させた。それなのに脳裏に浮かんでくるものといえば、檻の中のハツカネズミがカラカラと音をたてて車を回すイメージばかりだった。

(俺は何を話せばいい? 何を話せってんだ?)

 久志の頭脳はひたすら空回りするばかりだった。

いくら彼だって自己紹介の一つくらい用意してきてはいた。

「啓明大学文学部史学科の荒木久志と申します。趣味は映画鑑賞です。性格はきれい好きでまじめで、自分でいうのも何ですが、正義感がとっても強いです」

 そういおうと考えていた。これでもたっぷりと自己アピールをしているつもりだった。

数ヶ月前、彼の母校である啓明大学でも、「就職活動に臨んで」と題された催しが開かれていた。久志も一応出席はしたのだが、退屈のあまりいつの間にやらうつらうつらとしていたらしい。何人かのOBやらOGやらの就職活動での奮戦ぶりが本人の口から語られたというのだが、「あれ、そうだったっけ?」という認識しかない。それでも断片的にだが憶えていることもある。あった。それは「自分を客観的に分析し、長所と短所を明確にして、良いと思われるところをとにかくどんどん売り込め」ということだった。とりあえずこのご意見はありがたいお言葉として受け賜わっておくことにした。

後日、資料請求が一段落したところで、久志も自分の長所というものを改めて考えてみた。「一つや二つは簡単に出てくるもんだ」と高を括っていたのだが、「あれ? おかしくない? 何も出てこないんですけど」。

 我がことながら驚いた。ビックリである。「腰抜け」「地味」「打たれ弱い」「基本的にネガティブ」等々。良いことはちっとも思い浮かばなかった。それでもどうにかこうにか搾り出したのが、「意外にきれい好き」「結構真面目」「法に触れたことは絶対にないとは言い切れないかもしれないが、たとえあったにしても、あまりないんじゃないのかな。それにもし何かしらの法を犯していたとしても、それほど大それたことはしでかしていないんじゃないのかな」――そんなところだった。要は、荒木久志という人間には、胸を張って主張出来る自慢や長所といったものなど、何にもありはしなかったのである。

久志は思わず呟いたものである。

「俺って一体……」

 気が付くと、長かったヒマワリの“主張”がいよいよ締めに入ろうとしているらしかった。

「ええっと、ええっと」と、ない知恵を振り絞っているうちに、無常にもヒマワリの主張は終わってしまった。

「それでは次の方。お願いします」

久志は即答妙意からはほど遠い人間であった。

「あ、あのう……」


 これでは、現在の状況では主人公が其の才能を此の世界に行使しないと断言出来ない様な気がしてしまうのです。

 なので、此の物語の舞台である世紀末に反映させているのは、原則、今現在の手前迄に留めています。


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