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テレポートした先で久志を待っていたのは、敵と認識したUFOと、恐怖に駆られて逃げる、ただ一機だけ幸運にも瞬殺から逃れたF‐35Jだった。久志は両者の間に割って入った。立ちはだかった人型白色発光体に対して、UFOは明らかにそれまでと異なる反応を示した。
〈同士よ。同士なのか?〉
フラフラと漂わせるようにしていた触手を一瞬硬直させた。次の瞬間、全ての触手を久志に向かってしならせてきた。触手のどの一本にも一欠片の敵意もなく、ごく僅かな破壊力すらないことを久志は瞬時に見てとったが、敢えてその全てを躱した。数十本の触手を苦もなく掻い潜って真下に潜り込むと右の拳を突き上げた。
(消えろ!)
オクタマの怪物の頭を吹き飛ばした時とは異なり、拳には全く手応えはなかった。なかったが、意図していただけの破壊力は伴っていた。撃ち抜かれた対象は殴られた個所だけでなく、存在そのものを完璧に消し去られた。
〈これらも敵なのか?〉
“声”が再び囁く。
さっき消滅させたのと同じ型のUFOが四十九機――四十九ヶ所。それはやはり地球上のどこかだった。久志は全身から同時に四十九発の光弾を発射した。放たれた光弾は位相空間をくぐり抜け、四十九のターゲットを完全に破壊した。
(あれっ?)
眼下の景色に見覚えがあった。そこは月曜にはるばるやって来たトウキョウらしくない田舎だった。
(ここ国内じゃん。それもすっげー近くだったんだ)
ジェット機の爆音が近づいてきた。さっき逃げていったはずの戦闘機だった。翼に日の丸がついているのを見て、「ああ、やっぱここニッポンなんだ」と再認識した。
(あれがF‐35Jってやつか。F‐35と見てくれはほとんど変わらないくせに、何だかんだで普通の三倍も金がかかってるっていう。まさかこんなカタチで実物にお眼にかかることになるとは思わなかった)
F‐35J。計画段階ではFX(次期主力戦闘機)と呼ばれていた機体であり、実は今の名前もあくまで仮称であり、正式名称及びニックネームは先日締め切られた公募によって決定されることになっている。
(確か賞金が三百万円で副賞はFXの模型と自衛隊見学ツアーの特別優待券だっけ? 優待券ってのがよくわからん。金券屋に持って行っても大した金になりそうにないし。何だかんだでE電の二の舞になりそうなんだけど。それ以前に賞金三百万って。どういう感覚してんだよ。気前良すぎだろ。税金だろ? それも。こんなところでそんな大盤振る舞いしてどういうつもりだよ)




