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「で、昨日のニュースな。とにかく昨日のニュースは世界各地に出現して暴れまわった双頭有翼の怪物どもの映像ばっかり繰り返し流していたよ。あとはオクタマの怪物の首なし死体が少し。それから人型白色発光体。つまり、お前。久志のことな。久志の扱いは怪物どもに比べればほんのちょっとだったけど、それは出演時間があまりも短かったからだろうな。だけど、インパクトは抜群だったぜ。何しろ、世界中の怪物どもをまとめて瞬殺だからな。人類じゃ手も足も出なかったってのに」
「そ、そうなの?」
ちょっぴりだがなんだか照れ臭い。
「ちなみにお前のこしらえたオクタマの怪物の首なし死体、現在分析中っていう話らしい。現地は厳重に封鎖されているんだと。分析を担当しているのはこのためだけに編成されたスペシャルチームってことなんだけど、メンバーは全員US人なんだと。エ〇ア五一でやってるみたいなことやってんのかね? その辺、何だか情けねえよな。ここニッポンなのによ」
「まあなあ」
「んなヒマあったら、銃規制とか、医療費見直しとか、もっと他にすることあるだろよ」
「それはそうだけど、それとこれとは話が別だろ」
「でもよお、基本この国、何から何までUSのいいなりじゃね? 世界の警察だか何だか知らねえけど、警察がいっつも正義の味方とは限らねえだろ。だって、丸腰で無抵抗の黒人を平気で殴る蹴る、それでもってまだ足りねえとばかりに拳銃で撃ち殺す白人警官だっているんだぜ。しかも、そんなんがちっとも珍しくねえときている」
「それはまあ」
「最近、USが新国際連合軍構想みたいなのぶち上げたじゃん。それに対して、そいつに参加すべきとかすべきでないとか、自衛隊の海外派遣を容認するとかしないとか、有事が起こったらどうのこうのって話し合っている奴らと、あちらさんにわざわざお伺いをたてて今回の緘口令をしいた奴らって同じ面子なわけじゃん。そういえばあいつら、この際、憲法を改正して、『自衛隊に存分に仕事をさせてあげたい』とかもいっていたな。で、その流れでもって防衛庁を防衛省に格上げさせて、自衛隊はこの国の“長老”どもの宿願叶って晴れてニッポン国軍に昇格――、とでもなるのかね。どうなっちまうんだろうな。この国」
「あの人たちが議論していた有事とはだいぶ話が違う気はするんだけど」
「そりゃそうだけど。あーあ。こりゃ不況は当分続くな。『景気を良くする』とかほざいてる連中って、要はまんまあいつらだもんな。実際、ずーっと不景気は続いてて、ちっとも改善なんかさてなんかいねえし」
そういいながら、連蔵は教室の時計で時間を確認して、自分よりは頻繁に学校に来ている久志に訊いた。
「学食、そろそろ空く頃だっけ?」
「うん。そろそろかな」




