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一瞬適当に誤魔化そうかとも思ったが、それらしい嘘が出てこなかった。
「……俺」
相も変わらずアドリブが効かない。
(俺のバカ)
「何であんなことが出来るんだ?」
「わかんね。こっちが教えて欲しいよ」
「変身する時は、何か小道具使ったり、変なポーズとったり、声を出したりするのか?」
久志は連蔵の顔をじろっと睨んだ。
「何だよそれ。俺はAV女優か。何も使わねえし、何もしねえよ。ただ昨日、あの映像を見た時、俺なら何とか出来そうな気がしたからそうしようとした、それだけだよ。そしたらああなっちまった。我ながらよう解らん」
「オクタマの怪物騒ぎもお前絡みなんだろ?」
「オクタマ?」
久志は体ごとがばっと連蔵の方に向き直った。
「朝刊にそんなことまで出ていたのか? 昨日のことだけじゃなくて」
「読んでないのか?」
「昨日は家に帰ってすぐ寝落ちしちまったし、今日は起きたら遅刻しそうだったから、せいぜい電車の中で新聞の見出しを見たくらいだよ」
「ふーん」
「で、何て書いてあったんだ? オクタマの方は?」
「俺が見た範囲じゃ、どこの新聞も、昨日の二十四匹の怪物と人型白色発光体の出現の関連記事ってことで、一昨日のオクタマのことに触れていたよ」
「どんなふうに?」
「何でも、ピカッと白く光った後の坂道に、頭部を吹き飛ばされたと思しき、昨日とは全く異なる怪物の首なし死骸が転がっていたんだと」
「そうなんだ……」
「『頭部を吹き飛ばされたと思しき』ってことは、お前、あそこでそいつの血液やら体液やら脳みそやらを、派手に辺りにぶちまけたってことだよな? 昨日みたいに跡形もなく消滅させたりせずに」
「そりゃまあ、オクタマは咄嗟だったし……」
昨日は一昨日とは異なり、変身したのも、その後に身体をコントロールしたのも、紛れもなく久志の意思によるものだった。光球を放った時、久志の心には、「得体の知れない物質をばら撒いて辺りを汚してはいけない」という思いが確実に存在し、「標的を完璧に除去しよう」という意図が確実に込められていた。
「よかったな、久志。お前がやったってバレてなくて」
「何で?」
連蔵は悪戯っぽく囁いた。
「だって、わけわかんねえもん派手にそこら中にぶちまけたのがお前だってバレたら、ソッコー訴えられそうじゃん。清掃費とか賠償金とかいろいろとふんだくられたりするんじゃねえの?」
「洒落になってねえよ。それ」
寝る前にもう一本いけると思います。




