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代わって現れたのは見覚えのある国営放送のアナウンサーだった。
「どっきりとかじゃねえんだ」
連蔵も神妙にならざるを得なかった。
久志の耳にも断片的にではあったが、アナウンサーの声は届いている。
「…ほぼ同時刻に世界各地、二十四ヶ所に出現したUnknownによる被害は……」
久志はギッと奥歯を噛み締めた。
(そういうことか)
意識を内に向けて心の声を荒げた。
〈「来た」っていうのはこいつらのことか〉
〈そう。君に対する敵意はない。しかしこの近辺にはなかった力ではある。故に出現時に君に告げた。全部で二十四体。あれは君に関わりがあるのか? 君にとって何かしらではあるのか?〉
久志はギリっと強く奥歯を噛み締めた。
〈あれが敵じゃなかったら何だ!〉
久志は意識を外に戻して口を開いた。
「ちょっと行ってくる」
それだけいうと久志は変身した。
白い閃光を発してその場から姿を消した。
「えっ?」
連蔵と篤は顔を見合わせるしかなかった。
その直後に久志は二十四体のうちでもっとも戦闘力の高い個体に相対していた。
怪物は久志の脳に直接語り掛けてきた。
〈どっちの奴だか知らねえが、あれは俺たちが…〉
問答無用とばかりに久志は右手から球状の光を放った。
その時久志の頭にあったのはオクタマでの反省だった。
(わけのわからないモノを飛び散らかして辺りを汚したくない)
眼前の怪物は跡形もなく塵と化した。貫いた光球はそのまま急上昇し、最高点に達したところで二十三本の光の槍に分裂して降り注ぎ、残り全ての怪物を串刺しにして完璧に消滅させた。
テレポーテーションで自室に帰ってきた久志は万年床の上にどさっと崩れ落ちた。
「…昨日もこうやって戻ってきたのか」
心身ともにふらふらで、今にも思考回路のスイッチがオフになりそうだった。そんな状態の久志がしたのはビデオの録画ボタンを押すことだった。今度はどのチャンネルも報道特別番組を放送することだろう。
何がどうなっているのか、自分が何なのか、久志は知りたかった。
「やり慣れない事するから、矢鱈と疲れて……、眠く……」
コトンと久志は蒲団の上に突っ伏してそのまま深い眠りに落ちた。




