鬱 エピローグ
ほんのちょこっとだけまた鬱……。
親しい人たちの顔。
通いなれた道。
行きつけの場所。
それらが走馬灯のように、一人佇む久志の脳裏をよぎる。
いよいよ運命に立ち向かわなければならない時が近づいている。
「今日で世界を終わらせたりなんかしない!
終わらせてたまるか!」
そうはいってみたものの、身体の芯の辺りから間断なく溢れてくる恐怖と不安はどうにもならなかった。如何ともし難かった。
震えが止まらない。
歯の根が合わない。
「メンタルがどん底だった時は死ぬことなんて屁とも思わなかったのに……。それどころか、『死ぬしかない』としか考えられずに思い詰めていたくせに……。今は死ぬのが怖いんでやんの。ビビりまくってやがんの。人間なんてもんは本当に自分勝手で現金で都合のいいヘタレだよな」
口にしている自分の無様さに笑えてきた。
「ハハハハハハハ。人間か。そうだよ、人間だよ。思いっきり人間でやんの。ただの人間だよ。お前は。こんな情けない神様がどこにいるっていうんだよ? ホント、こいつはどうしようもねえな。どうしようもないヘタレでやんの。ハハハハハハ…………」
逃げ出せるものなら逃げ出したかった。
だが、そんなことなど出来はしない。
そして、守る。
守らなければならない。
大切なものを。
恐怖から逃げるように、ごくごくと焼酎をあおる。とにかく注ぎ込む。体の震えを強引に押さえ込むように体を丸め、両膝をギュッと抱え込んだが、震えは止められない。幾ら強く喰いしばっても、奥歯は今にもカタカタ鳴り出そうとする。少しでも全身の力を緩めたら、身も心も、何もかもが、空中分解してバラバラになってしまいそうだった。
アルコールの力を借りても、結局、どうしようもなかった恐怖に、責任の重さに、ただの一人の人間――荒木久志は必死になって耐えていた。
時計を見た。
正午まであと一分。
ごくりと焼酎を一口。
ゴトリとペットボトルを置くと、久志は口を拭って立ち上がった。
それから叫んだ。
「俺は勝つ!
絶対に勝つ!
絶対またここへ帰ってくる!」
久志は変身し、約束の地へ赴いた。
鬱りましたが、吹っ切りました。
もう最後ですから。
だって、なんたって主人公ですから。彼は。正義の味方ーー変身ヒーローものの。
部屋着ジャージに裸足。
主人公、最終決戦の場へ近くのコンビニへ行くよりも手軽な格好で行っちゃいました。
次回、最終決戦の地へ……、
の、前にちょこっと……。




