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穢れ沼

「それで世界を癒す? ってなんですか?」


私はこの事態の核心をまず聞いてみた。

かなり切羽詰まった印象だったため話を渋られるかと思ったが、グナーデ王子はすんなりと教えてくれた。


「元々この世界は、魔力の淀みが穢れ沼となって現出するのです。それを浄化しなければ魔物が溢れ世界が闇に包まれます。 そして沼を浄化し癒すのが聖女。 しかし先日聖女が高齢で亡くなられたのですよ。後任が見つからないまま。 そこで異世界から聖女の資質をもった者を父王は召喚しようとなされたのです」


そして失敗した、と。

どこの世界も後任育成がうまく行かないらしい。

本当に世知辛い……。


「そんな状況なら後任の候補ぐらいはいなかったのですか?」


「三人いたのですが……。1人は平民ということで、貴族の間で政争の引き金となりましてね。養女として囲い込んだものが、今後50年以上は国の重鎮となります。 あとの二人は貴族ですが派閥がそれぞれ違う」


「つまり、国の危機に為政者の足並みが揃わないからと、他の世界から呼び出したと……。 滅んでしまえばいいそんな国」


私は悪態をついたが、すぐに口をふさぐ。

仮にも相手は国の王子だ。その人の前に吐いていい言葉じゃない。

しかし、グナーデ王子は悲し気な顔を浮かべるばかりで私を叱責することはなかった。


「ヒジリ様には申し訳なく思っております。 せめてこの世界で暮らすには十分な金銭をお渡ししますので、それでこの世界でお過ごしください。 元の世界へ帰る方法も私が必ず見つけますので、どうかご容赦を……」


どうやら本当にこの王子様は申し訳なく思っているようだ。

これ以上この王子様の心労を増やしてもかわいそうに思える。


「気にしないでください。 金銭をいただけるというというだけでとりあえずはなんとかなりますから……、あとそうですね。その穢れ沼って今ももう出来てるんですか?」


「お心遣い痛み入ります。 ええ沼はもう国を覆う森の中にいくつかできておりますが、それがなにか?」


「いや一度何かできないか見てみようかと、なにか理由があって呼ばれたかもしれませんしね!」


これはただのお節介かもしれない。

ただ、魔法少女として長く務めた私はお節介こそがその性質なのだ。

この性分を利用されたとも思うが、この王子の為に少しでも力になってあげたいと思ったのだ。何もできないかもしれないが。

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