騎士のプライド
「大変業腹だが、この話受けてくれないか?」
眉間に深い皺を寄せたサラは私に憎々し気に言ってきた。
余程困った状況なのだろうが、己の力不足で主を危険に晒すわけにいかないと気持ちと、得体のしれない人物を近くに置かなければいけないという葛藤が見せた表情だろう。私は仕方がないと受ける気持ちになった。しかし、一つ問題がある。
「正直この人数は面倒が見切れない。 貴方と、あの男の子の二人以外は帰ってほしい」
「われわれは無視して構わない。 それならどうだ?」
「目立ちたくないと言っているの」
「あれだけ派手に登場してか?」
驚いたような顔をするサラ。だれのせいで血まみれになったと思っているのだろうか?私はむすっとした表情を作り嫌味を言う。
「あなたが勇敢にも前に出ていたおかげで私も遠間からの不意打ちなどやめ凛乎として、追従しただけですよ」
嫌味の意味が分かったらしく、「大人しくしている」とだけいうとテントに戻っていくサラ。少し言い過ぎただろうか?
私がテントに戻ると、男の子は嬉しそうな表情を見せた。
私が条件付きで了承したことを聞いたのだろう。
引き受けはするが念のため、いろいろ確認しておきたい。
「えーとそういえば私の名前はヒジ……、いえ……テジーとでも呼んでください。 お名前をお伺いしても?」
「僕の名前はフロルド――」
「坊ちゃま!」
急に名乗りを止めるサラ。どうやら、家名を晒すのはタブーの様だ。
ならば無理に聞く必要もない。
「わかりました。フロルド様、私は貴方の護衛として、お力を貸しますが、この場の事は内緒にしていただけますか?」
「いいよ! それで報酬だけど、金貨300枚でいいかな?」
提示された金額は大金だった。この国の中級国民の10年分の給料と言ったところだ。パトロン――腹黒王子に頼ってばかりだとなにかと怖いので自分自身の資産があっても困りはしない。私はありがたく頂戴することにした。
「それで、フロルド様は沼の中心まで行くつもりですか?」
「そのつもり、あのつまりを解決しないと……」
ん?今少し気になることを言った気がする。
だが、サラの顔が険しくなっていく。
どうやら、出発を急ぎたそうだ。
私は一度話を切り上げ、早めの移動を選択したのだった。