男の子
「失礼する。 湯を持ってきた使ってくれ」
女騎士が持って来た、たらいからは湯気が出ていた。
「ありがとうございます。 置いといてください」
「ふむ。 どうしたのだ? まだ服すら脱いでいないとは、まさかどこか怪我でもしたのか?」
そういうとたらいを置き、私の身体を掴む女騎士。
そして背中や、スカートの腰回りを探る。
どうやら、私が怪我していないかの確認しつつ、服を着替えさせようとしている。
しかし、
「ん? この服どうなっているのだ? 継ぎ目がないぞ?」
そういうと、腰元の剣を抜こうする。私はそれを慌てて止めた。
「すいません。これ一張羅なんで切るのはやめてください!」
「いやそれどうやって着ているのだ? ……、しかし、女子の衣服を無理やり剥ぐのはいささか、無粋か」
そういって彼女は引いてくれるが、さてどうしよう?
いっそ逃げようかと思ったところだった。なにやら外がさわがしいそう思った、次の瞬間! 10歳ぐらいの男の子がテントに飛び込んできたのだ。
その姿に慌てて、振り向く女騎士。
「でん……。坊ちゃま! 婦女子の着替え中に入るなど、紳士にあるまじき行為ですよ!」
「え~だて遅いんだもん。 サラを救ってくれた恩人に早くお礼を言いたかったんだ」
「え~じゃありません! 少しご自重を!」
「はーい。 ねぇねぇところでそこのおねーさんがサラを救ってくれた人でいいの?」
「その通りでございます。 まだ着替えが済んでおりませんので、中央のテントでお待ちください」
どうやら女騎士はサラというらしい。
しかし、やんちゃそうな男の子だ。金色の髪に、青緑の瞳、目元は無邪気に笑顔を振りまき、元気が有り余っている様子だ。
「わかったよ。おねーさん! 着替えたらきてね!」
そういうと元気に走っていく男の子。
その後ろ姿に二人とも、ため息をつく。
「はぁー……」
「はぁぁぁぁぁ!」
「あのやんちゃさはたまらんな、まったく」
「たまりませんなぁ……」
サラは呆れた様子で、私は興奮しながら彼を見送くる。
私の言葉に女騎士は「え?」と怪訝な表情を浮かべた。