ハインリヒ王国
ラブコメ展開? 残念、それはトリックさ。
すいません。
導入だけで、ちょっとながくなったので区切ります
街の外での沼についての講義以降、聖女に頼らない沼対策として国の職人たちは手放しで協力してくれている。
私はというと相も変わらず、発生した沼にズドンと一発! 魔力砲をぶつけて森と街の往復の毎日だ。
定期的に暇さえあればやってくるグレイやガーランドは、王子に言って聖女扱いはやめさせるように言ったが今のところ特に効果はない。
どちらかと言えば、王子も本気でやめさせたいようだが、二人には二人の思惑があるのか王子の窘めるような言葉にも耳を貸さないそうだ。
出禁を言い渡したいが、王子が渋り現在は森へ向かう時に二人の太鼓持ちを連れ歩くことが増えていた。
ある日森から帰る途中のことだった。
今日は珍しく一人だった。
沼は環境汚染だけが問題ではなく、怪異に似た化け物も産む。
今回はその当たりを引いた。元々予定ではそちらに行くつもりがなかったのだが、森の中に人の気配を感じて上空を飛んで確認に来たのだった。
怪異――この世界では魔物と呼ぶらしい、が兵士の一団と戦っている。
それは大きな鹿で、その角は無軌道に伸び切っ先は鋭く首を振り走り回るだけで兵士の鉄鎧を容易く切り裂いていく。
その暴威に一人、また一人と兵士は倒れていくが、おそらくこの一団のリーダーと思われる女騎士は勇敢にも前に立ち、立て直すために激を飛ばしていた。
「ありゃ、無理そうだなー。 あんま近接戦ってしたくないんだけど……。こっから狙撃すると、あの女騎士さんにもあたりそうだし、仕方ないか」
私は魔法の杖の先を、鹿に向けると前傾姿勢を取る。
そして魔力のブレードを杖に展開すると、そのまま流星の様に突っ込んだ。
その後すぐに衝撃が私を襲う。ブレードは鹿のわき腹をえぐり、勢いで血流を圧迫したのか、目から血を流し、全身から血を噴出し鹿は絶命した。
そのせいで私は全身を返り血に染まる。
その凄惨な状況に、女騎士はかわいく悲鳴を上げた。
――私は兵士たちからタオルを貰い、服を拭う。
着替えるように言われて服も渡されたが、魔法少女の服は脱げない構造になっているし、変身を解けば返り血は消えるが解くのも面倒がありそうだ。
なにせ今私がいるのは、ハインリヒ王国の国章の青い菊があしらわれたテントの中にいるのだ。テントの中は私一人だ。
明らかに国の関係者、そもそも私が件の王を殴った偽聖女と知る人物がいれば面倒ごとになるのは明白だ。
血まみれの恰好をどうするか悩んでいると、先ほどの女騎士から声が掛かった。