第91話 さらばだ
俺はショウガと一緒に貧民街の木陰で休む。
「リューガ...大丈夫か?疲れてるんだよ...」
ショウガは俺の頭を優しく撫でる。
「疲れてない...なんで、覚えてないんだよ...」
あの時、何があった。なんで、みんな忘れたのだ。
”ポリポリ”
「リューガ...我は...リューガを信じるからな...」
ショウガは右手でずっと俺の頭を撫でる。左手は太腿の裏を触っている。
「太腿...なんかあるのか?」
「あ?あぁ...蚊に刺されてしまってな...」
蚊。記憶。リカ。
俺の頭の中で全てが繋がる。
「もしかして...俺だけ血を吸われてないから?」
俺だけ蚊に刺されていないのだとしたら。蚊が記憶を吸うのだとしたら。蚊が記憶を吸って盗んだとしたのなら。
「なぁ...ショウガ...俺、気づいたよ...」
「何がだ?」
「お前らが記憶喪失になったんだよ...」
「そうなのか?」
「あぁ...俺の仮定なら、みんな蚊に刺されてる...」
「じゃあ、確かめてみようぜ!」
俺たちはユウヤ達のところに走る。
***
「あ、アイキーを見つけた!」
マユミは貧民街の真ん中でアイキーを見つける。貧民街の中心の井戸の中にあった。水の中でキラキラ光ったものがあったので、もしかしたらと思ったら案の定、アイキーだったのだ。
「よく、見つけたな...」
「うん!」
「さて、リューガは大丈夫だろうか...」
「ねぇ、本当にリカって人はいたのかな?」
「まさかな...記憶にないんだぞ?」
「そう...だよね...」
「おーい!みんなぁ!」
前からショウガが走ってくる。
「おぉ!ショウガ!探してたぞ!」
「なぁ!みんなは蚊に刺されてないか?」
「蚊?」
「あぁ!虫の{蚊}だ!」
「蚊...あ!刺されてる!」
「やっぱりな!」
ユウヤの他の3人にもしっかりと蚊に刺された後があった。
「だからだ!だから...みんな記憶が無くなったんだ!」
「もし仮にだ、記憶を奪う蚊がいるとしよう...どうして、同じ記憶を全員奪われるんだ?」
「それは、誰かが命令したんだ!」
「そんなの、妄言だろう?俺は、信じないぞ?」
「なっ...カゲユキ?」
「お前は、俺らのことを危険に晒し過ぎている...第3の試験でも関係のない月光徒まで戦闘した...そうだろう?」
「そうだよ!だから、5の世界で...」
「それは、ユウヤの決断だ...俺は8の世界に行くぞ?」
「そんな...」
「私もー!」
「じゃ、じゃあ...俺も!」
「え、みんな!リューガとショウガはどうするんだよ!」
カゲユキに相次いで、マユミとトモキが8の世界に行くことを賛成するか。
「ユウヤは残りたければ残れば良い...」
「俺はリーダーだぞ!」
「お前がリーダーなのは{ユウヤチーム}の中でだ、それに...俺らはリーダーをじゃんけんで決めただろ?お前がじゃんけんで全員に勝ったからリーダーなだけで、俺が勝てば{カゲユキチーム}になってたんだぞ?」
ユウヤは黙ってしまう。
「{チーム一鶴}のリーダーは、確かにリューガだ...だが、脱退するよ...俺たち3人は...」
カゲユキは冷たい目線を俺に向ける。
「な...そんな...」
「第三の試験だって、リューガいなくともアイキーは探せた...それに{ユウヤチーム}のままなら、5の世界も6の世界も簡単に乗り越えられただろう...月光徒なんて、苦労せずにな...」
言い返せない。事実だ。確かに事実なんだ。
「さらばだ...リューガ、俺たちは8の世界に行くよ...」
俺は止められない。止めても、どちらにせよ、行ってしまうだろう。
「ユウヤは...どうするの?」
俺はカゲユキ達の背中が見えなくなった後、ユウヤに問う。
「リューガ...俺...まだ、思ってたんだ...リューガなら3人を止めてくれるって...」
ユウヤはこちらを見てくれない。
「でも...止めてくれなかった...カゲユキは頭がいいからさ、俺が止めても論破して行ってしまうんだ!でも...リューガさんなら、それなりに頭もいいから、止めてくれると思ったよ!でも...」
ユウヤは泣き顔をこちらに向ける。歯は食いしばっていた。
「止めてくれなかったよね...」
ユウヤの涙は溢れる。
「それは...」
「わかってるよ...カゲユキは口論に強いことくらい...でも、負けてもいいから!止めて欲しかった!誰のためにか?俺のためにだ!そんなの、自己中心的な考え方なことくらいわかってる!でも...カゲユキ達のことを止めてくれた方が...俺はリューガを信じれたんだ...」
「ユウヤ...」
「ごめんなさい!」
ユウヤは走ってカゲユキ達を追いかけていく。
「みんな...」
「はぁ...最初に戻っちまったな...いや、リカという女の子もいたのか?」
「あぁ...ショウガ...」
「安心しろ!我はリューガを信じてるし、我は我を信じてる!我はリューガを見捨てるようなことはしないよ!」
俺の目からは涙が溢れる。俺はショウガの胸の中で静かに泣いた。
ショウガは、自分の記憶の中にない「リカ」の為にここに残ってくれた。
***
「それじゃあ...行くぞ...」
マユミはアイキーをはめる。そして、時空の結界の中に入っていった。
ユウヤ・トモキ・マユミ・カゲユキは7の世界 アルゴロを去っていった。
ワッケラカエンに負け、リカを連れてかれ、自分以外のリカとワッケラカエンの記憶を奪われ、ユウヤ達4人はチームを脱退していく。
リカとユウヤ達のどっちを皆さんは救いたいですか?




