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第949話 『地震雷火事Overseas』

 

「───ッ!」

付加価値(アディショナルメンツ)』の『伍』であり『聖夜(クリスマス)』の二つ名を持つ、赤髪ロングの礼服を包んだ男───ヒンケルを相手取り、刀を振るったユウヤ。だが───


 ───いとも簡単に吹き飛ばされてしまい、そのまま窓を割って外へと落ちていく。


「───ッ!」

 背中に風を浴びながら、落下の着地点を見て着地に備えるユウヤ。

 殴られた左横腹がズキズキと痛み、ヒンケルの強さを理解し、ユウヤはすぐに中に戻らなきゃと思いながら重力に付き従って、地面に吸い込まれるようにして落ちていき───、



「───『地震雷火事Overseas』」

「な───ッ!」


 どこかで聞いたことのある声と同時、ユウヤを襲うのは一筋の雷。地面へ落下するユウヤは、その雷に打たれる。


「───グッ!クソッ、お前は!」

 雷をその身に一身に受けながらも、失神せずになんとか地面に着地し、その雷を放った人物の方を見る。そこにいたのは───


「───『付加価値(アディショナルメンツ)』の『参』。『裏の裏の裏は裏』のキリカ。お久しぶりね、ユウヤ」

 そう口にして、過去に一度ユウヤと戦ったことのある金髪ポニーテールの少女は柔らかな笑みを浮かべる。

 年齢だけでみれば、ユウヤとそう変わらなさそうな彼女だが、その実力は折り紙付きだった。


 前回、ユウヤは奇跡とも言える勝ち方をした。

 そのため、一杯食わせたものの一敗したと言っても過言ではないユウヤはフラリと立ち上がって剣を握る。


「───久しぶりだな、キリカ。あの時みたいに、上手く行くとは思うなよ?」

「そっちだって。私が気変わりしなかったらあそこで死んでたのに。偉そうね」

 ユウヤは、まるで補正が入っているかのような勝ち方を前回はしたのだ。


「前回のように、生半可で甘っちょろい気持ちじゃ挑まないから。覚悟はできてるわよね?」

「───もちろんだ。勝負しろ」

「───では」


 その言葉と同時、数メートル先にいたキリカの顔が、ユウヤの間近に近付いてくる。

「───ッ!」


 ユウヤは、咄嗟に横薙ぎに剣を振るいキリカに強制的に距離を取らせる。


「───『地震雷火事Overseas』」

「───ッ!来るッ!」


 地震雷火事Overseas・・・地震・雷・火事を自由自在に起こす事が可能。


 キリカの使用する『地震雷火事Overseas』は、地震と雷・火事を発生させるものであり、その中のどれが選ばれるか───というのは、キリカの心を読まない限りはわからない。要するに、ユウヤにはそれを読み取る技術はないのだ。


 来るのは炎か、雷か。はたまた地震か。ユウヤを襲うのは───、


「地震───」

 地面が鳴動を始めると同時、ユウヤの声が響く。そして、それと同時に───



「───と、雷!」

 地震と同時、空から降り注ぐ雷を避けるために、その場から前転するような形で離れていく。


「───まさか、この攻撃を避けるとは...」

 地震に気を取られて、足元を注視したところを、上空から襲い掛かる雷で攻撃しようという二段構え───いや、雷に撃たれたと同時に、キリカは飛びかかって膝蹴りを食らわせようと画策していたから、三段構えであったが、ユウヤが咄嗟に雷を回避したため、二段目と三段目の2つを回避することに成功したのであった。


 ユウヤが避けたのがわかると、他の人の戦闘を考えてか、キリカは地震を止めて───


「『地震雷火事Overseas』」

「───ッ!」


 直後、数発の雷がユウヤを襲うように落ちていく。ユウヤは、咄嗟に立ち上がりその雷を、全て紙一重で交わす。

 ユウヤの豪運───いや、この回避はユウヤの豪運は関係なく、これまで積み上げてきた努力がその体を突き動かしている。ユウヤだってもう運だけの男ではないのだ


 彼は、『チーム一鶴』の副リーダー。バトラズやモンガ程ではないが、彼だって1人の剣士なのである。だからこそ、彼は防戦一方の状態にある今、攻撃を仕掛けるためにその剣を振るう。


「───負けてられないんだよッ!」

 その言葉と同時、大きく剣が振られる。キリカは、冷静にその一閃を体を後ろに引かせることで回避する。


「まだまだッ!」

 連撃。


 ユウヤは、剣を振るう手を止めない。キリカの首を切ることを目標にしつつも、その剣筋を見極められないために首以外のところも狙い、着実にダメージを重ねる心を試みる。も、キリカもキリカで『付加価値(アディショナルメンツ)』として認められるほど実力を持つ女。

 能力を封じていた状態とは言え、ヴィオラの部下の中で最も強かったノーラに勝つほどの実力を持つ猛者。


 ユウヤの攻撃は、的確に見極められて回避を連続で行われる。そして───


「そろそろ、殺害(うんどう)しないと」

「───ッ!」

 その言葉と同時、ユウヤの握る柄の部分をキリカに掴まれて、そのままユウヤの腹部にキリカのスラッとした美脚がめり込む。


 その細くて白くて美しい、女性らしさの究極のような足であるが、その蹴りの威力は凄まじかった。


「───クッソ」

 ユウヤは握った剣を離さずに、後方まで転がるようにして倒れていく。ゴロゴロと転がった先で、喉の奥が酸っぱくなるのを感じながら、剣を地面に突き立てて、立とうとしたのだった。


「───へぇ、私の蹴りを食らってもまだ立てるんだ。ユウヤ、強いね」

 キリカが、ユウヤを認めるような発言をする。ユウヤは、痛みに耐えながらもしっかりとその双眸でキリカを捉えて、キッと睨む。

 そんなユウヤの視線とは裏腹に、何も考えてい無さそうな目のままキリカの口から告げられたのは、こんな言葉。


「それじゃ、次から本気出すから。覚悟してね」

『地震雷火事Overseas』は能力名を口にしても「揺れて」などと地震や雷などそれぞれを象徴するような単語を口にしても、どちらでも発動します。

今回「『地震雷火事Overseas』」とだけ口にしているのは、もちろんユウヤに対応させないため。そして、同時に地震と雷の2つを発動させるため。

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