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第937話 荒地での修行

 

 ───翌日。


「んじゃ、今日から修行をしまちゅ。ママも、ママ以外も厳しき行きまちゅから付いてきてくだちゃいね」


 自前の魔法杖をしっかりと握りながら、赤ちゃん言葉を使用する三十路の男性───『チーム一鶴』の魔導士の1にであるセイジであった。


「お願いします!」

「「お願いします」」


 そんなセイジに師事するのは、マユミとカゲユキ・リミアの3人。


「───と、リミアも魔法で大丈夫なんでちゅか?」

「はい、0からですがお願いしたいなーって。私、『羽休め』の回復要員でしかないでしょ?だから、いろいろな魔法を覚えたほうがいいでしょ?」

「そういうことでちゅか。了解しまちた、基本のきから教えることになりまちゅね。それじゃあ、えっと...」


 セイジは、少し考えた後に何かを思いついたようにしてこう述べる。


「それじゃ、ママのことは僕が教えるからリミアのことはカゲユキが教えてあげてくだちゃい」

「了解し───ちょっと待て。それじゃ、結局俺を教われないぞ!」


 流れるようなセイジの説明に、カゲユキは納得しそうになるけれども寸前で留まった。


「あぁ、説明が足りなかったでちゅ。ママとカゲユキの2人と、リミアは教えるものが違いまちゅ。まぁ、魔法を使いこなしている2人に魔法の基礎の基礎を教えても意味はないでちゅからね」

「あぁ、それでセイジがどちらか1人を担当している時に、もう片方はリミアを教えてやれ───ってことね」

「そういうことでちゅ」


「そう言うことだったのか、てっきりまたセイジがマユミと2人になるきっかけを作ったのかと」

「「私も」」

「んな、皆して...失礼でちゅね!」


 ───と、そんなこんなで、魔法の修行は開始したのだった。


「それじゃ、ママ。これからの戦闘に大切なのはなんだかわかりまちゅか?」

「うーんと...やっぱ魔法が放てる数───体力量?」

「体力がどれだけあるかはいつでも大切でちゅ。『チーム一鶴』が今一番魔法に欲しているものは何かって話でちゅ」

「威力かしら?」


「そうでちゅ。実感はないでちゅか?魔法じゃ慢性的に力不足だと」

「まぁ...言われてみればあるわね。あ、でもセイジの魔法を見てても力不足だとは感じないわよ」

「そこがぼくとママの差でちゅ。ママの魔法の威力を底上げするのが今回の修行の目的としまちょう」

「それで、どうしたらいいの?」


「力の出し惜しみをしない───でちゅね」

「出し惜しみをしない?」

「そうでちゅ。ママの魔法は、どこかで体力を残しておく───ってストッパーがかかってまちゅ。だから、そのストッパーを無くすのを目標にしまちゅ」

「どうすればいいの?」

「簡単でちゅよ、一発一発にありったけの力をつぎ込むつもりで行く、ただそれだけでちゅ」

「え、それって本当に大丈夫なの?」

「大丈夫でちゅよ。ある程度の魔導士になれば、どれだけ力を入れたら失敗するか体がわかってまちゅから、それに任せるんでちゅ。だから、死ぬことはないでちゅよ」


 そう口にして、魔法杖を強く握るセイジ。

 魔法は、その人の体力を使用して発動される。そして、生み出される巨大な炎の塊。


「こうして、巨大な炎を生み出せまちゅ。やってみてくだちゃい」

「───わかった」


 そう口にして、マユミも魔法杖を強く握る。そして、同じく巨大な炎の塊を生み出した。


「お、なんだかいつもよりも大きい気がする。その分、体力の消費も多いけれど...」

 マユミは、魔法を使って明確な疲労感を覚えた。


「いつでもどこでもMAXで打てるようにすれば、魔導士としてはかなり強くなれまちゅ」

 マユミは、全身全霊で魔法を後4発ほどしか使えないことをその身体で感じた。己の課題を理解したマユミは、師であるセイジに向かってこんなことを口にする。


「体力を増やしたい」

「そうでちゅね。体力を増やすことが魔法を極める第一歩でちゅ」


 ───と、その時カゲユキとリミアのペアもセイジ達の方へ近付いてくる。


「セイジ。俺とリミアは走りに行きたいのだが...」

「丁度いいでちゅね、ぼく達も走りに行こうとしてたところでちゅ。スピードを緩めること無く、10km走るところから始めまちゅよ」

「「「じゅ、10キロ...」」」


 当たり前かのように伝えられるあまりに過酷なトレーニングに、3人は驚いて取り組むのが億劫になってしまう。

 だけど、少しでも強くなるため。その足を動かし始めた。


「大体10km、休まずぼくに付いてきてくだちゃいね。ママがいるからって容赦はしないでちゅ」

 その言葉と同時、爆速でその足を動かして走っていったのはセイジであった。


「え、え、え、ちょっと待ってよー!」

 リミアは、途端に走りだしたセイジを見て驚きつつも、その赤ちゃん言葉の魔導士を追いかけるように走り出していったのだった。


「俺達も負けてられないな」

「そうね、『チーム一鶴』の古参の意地。見せてやりましょう?」


 2人はそう口にして、グータッチをすると2人のことを追いかけるように走っていった。


 ───結果として、セイジを除く3人は魔法が放てないほどにヘロヘロになったのであった。

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