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第935話 休養

 

 一体、どのくらい眠っただろうか。

 3ヶ月以上もの間、戦い続けたような錯覚に陥っていたからか、深い深い眠りの淵に落ちていたようだ。

 その日は大体10時くらいに布団の上から這い出た。ヒヨコだから、掛け布団に体を埋めただけではあるが。


「───リューガ、おはよう」

「ユウヤ、起きてたのか」

「ついさっきね。俺もまだ顔を洗っただけで他に人間らしいことは何もしてないよ」

「俺はヒヨコだから人間らしいことは何一つだってしないしできないけどな」

 そう言って、2人で笑い合う俺とユウヤ。


「左腕、復活してよかったな」

「そうだね。左腕がない時に慣れちゃったから少し煩わしさはあるけど両腕にある『鳳凰の縫合』を使えば着脱部分で切り離せるから問題無さそう」

 そう口にして、左腕を大きく動かすユウヤ。


「───んんん...」

 唸るような声を出しながら、体を捻らせてベッドの中から出てくるのはカゲユキであった。


「カゲユキ、おはよう」

「───おはよう...かなりの時間眠ってしまった...」

 カゲユキは、深く息を吐いてからそんなことを口にする。


「だが、月光徒からの襲撃は無かったようだな...」

「そうだな。ここまで熟睡できているってことは何者からの襲撃もなさそうだ」


 どうやら、チューバはマフィンを『回収』したのを見てからは追ってこなかったようだった。

 だがまぁ、幹部がヴィオラと合わせて2人も減ったとなると、月光徒にもかなりの痛手となるだろう。

 だから、ここでの撤退も読めていた。


「できる限り、次の接触でチューバを潰したくはあるな」

 俺は、そんな思考回路を経てこんなことを口にする。会話のつながりだけ見たら、少し繋がりは薄いと思うかもしれないが、チューバが来なかった事実には触れているので問題無さそうだ。


「そうだな。『無能』さえあれば問題ないからな」

 今回、俺がムレイの相手をすればよかったのか───と言われれば、多分違うだろう。


 ムレイの持つ『想像無操』を無力化できたのは俺以外いないはずだ。他の『チーム一鶴』のメンバーであれば、触れられたばかりで一発アウトであった即死級の怪物だったはずだ。


 だけど、こうしてムレイを倒せたのも俺と、俺の体の中に残っていたリカの魂の残滓があったからで───


 ───と、リカのことを考えると少し悲しい気持ちになってしまう。


 もう、俺の体の中にはリカの魂は残滓すらも残っていないのだ。だって、ムレイによって移動させられたから。あ、それとネビロスのも。

 別にネビロスのはどうでもいいのだが、リカの魂が無くなったのは、俺にとってかなり悲しいものだった。


 だが、最後にもう一度ああして共闘できてムレイを倒せたのはいいことと捉えるべきだろうか。

 リカも、俺達を逃がすために死ねて満足だったと考えるべきだろうか。


 ───そうかもしれないが、俺のエゴとしてはもっと一緒に旅をしたかった。


「リューガ、今日はどうするの?」

「そうだな、今日はアイキーを探そう」

「了解」

「そのまま、28の世界に向かうのか?」

「いや、皆疲れてるしちょっと27の世界に滞在しよう」

「───了解。だが、月光徒の方は大丈夫なのか?そっちの方が心配だ」

「俺も」

 やはり、月光徒のことをユウヤもカゲユキも不安に思っているようだった。


「幹部であるマフィンを倒した以上、向こうから新たに兵力を送ってくるのは───殺されたらもう幹部はいなくなるから少なくともチューバがやってくることはないと思ってる。こっちに来る強敵としたら、それこそ『付加価値(アディショナルメンツ)』とかだろうな。もしくは、独断でマフィンを異空間に押しやった俺達殺しに動いてくるマフィンの部下だった人とかだ」

「───大丈夫なのか?」

「確証はないけれど、俺達の居場所は月光徒に筒抜けだ。それこそ、どこの世界にいてもチューバの『透明』

 が駆使されてしまえば、どこにいようがバレちまうだろ」

「それも、そうだな...」


「───月光徒の話か?」

 寝ぼけ眼を擦りながら、少し掠れた声でそう口にするのは一番遅くおきたバトラズであった。

 だが、バトラズは昨日色々な猛者と戦った。

 25世界での第二次境内戦争では『妖精物語(フェアリーテイル)』の『鬼』であるオーガと刀を交えた後に、人工精霊であるキリエ・ショコラティエと手合わせし、その後に『ゴエティア』序列32位のアスモデウスとの戦闘を余儀なくされた。そして、そのまま26の世界に移動して月光徒のバンシュと戦い、チューバとマフィンから逃亡するための殿を務めた。


 これだけの激務を、たった1日───いや、時間にしては半日の間に行ったのだからこれだけ寝ても誰も攻めはしない。


「あぁ、月光徒の話だ。どこにいてもバレちゃうって話」

「───そうだな。昨日の襲撃も俺達の部屋ビタ当てだったもんな...」

 そう口にするバトラズ。もう、俺達は月光徒という憎き集団から逃げることはできない。


 次なる襲来に備えて、俺達は強くなるしかないのだ。


「───まぁ、今日はアイキーを取りに行く。この世界を、歩こう」


 俺達の今日の予定は、アイキーを手に入れることであった。

852話〜934話が1日の出来事って信じられねぇ...

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