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第931話 幹部討伐

 

 バトラズとモンガの、2人の鬼神(オニ)の支えがあって、俺達は時空の結界へと走っていくことに成功した。

 今日は、25の世界に起こった第二次境内戦争からノンストップでここまで来ているので、かなり疲労が溜まっていた。

 だけど、俺達は走る。ペトンが、リカが繋いでくれた命を守るために、走る。


「バトラズ!モンガ!もうすぐ到着する!」

「「了解!」」


 2人は剣を振るい、チューバとマフィンという、現在生存する月光徒の幹部全員の猛攻を上手く受け流している。

 無理に、攻撃する必要はなかった。なんとか、2人の攻撃さえ防ぎ続けられれば後はカゲユキの考えた「苦肉の策」とやらに頼ることができる。


 その「苦肉の策」は、時空の結界の中で行いたいらしく、俺達はそれを実行するために、時空の結界にまで逃げていたのだ。


「マフィン。このままじゃ『チーム一鶴』に逃げられてしまうぞ?」

「大丈夫だ。俺達は負けない」

「───全く、嫌な『嘘千八百(プラシーボ)』だ...」


 俺は、マフィンの「俺達は負けない」という発言に苛立ちを覚える。マフィンがそんな発言をした以上、俺達『チーム一鶴』は、目の前───正確には、目の後ろにいるチューバとマフィンに最高でも引き分けまでにしか持っていけない。


 そして、「負けない」と言ったら負けないのだから、絶対にマフィンやチューバを打ち負かすようなことはできないのだ。よくて引き分け、悪くて大敗。

 それが、マフィンの能力により、たった一言で状況が作られてしまうのだから本当にたちが悪い。


 セイジからの情報だが、マフィンは「喋れず能力が発動できない状況」を、もう既に『嘘千八百(プラシーボ)』により無くしているので、言葉を封じることも不可能だ。

 それだというのに、カゲユキは「苦肉の策」があるというのだ。一体、どうすればいいのか俺には全くわからなかったが、カゲユキができると言うのであればできるのだろう。

 俺は、仲間を信じることにする。


「アイキーをハメる!そしたら、2人以外はすぐに中に入って、止まらずに27の世界に移動するぞ!」

「了解!」

 先頭を走るカゲユキが、そんなことを口にして、時空の結界にアイキーをハメる。すると、時空の結界が開いて、漆黒の夜空が割れて、巨大な光の洞穴ができる。


「行くぞ!生きて、27の世界に!」

 そう口にして、俺達は突入する。後の戦闘は、カゲユキの作戦に任せっきりだ。

 俺は、立ち止まらない。リーダーだからこそ、仲間を信じて動き続ける。


「───頑張れよ、2人共!」

「えぇ!」

「おう!」


 俺は、「負けるなよ」とか「勝てよ」とか言わなかった。言っても、マフィンの能力のように本当にはならないからだ。

 そのまま、俺達は光に呑まれて、27の世界へ移動する。


「───と、ここは...」

 俺が辿り着いたのは、荒野の広がる新世界。27の世界であった。


 ***


 物語は、26の世界と27の世界を繋ぐ唯一の道、時空の結界で大きく進展する。


「クソッ!逃がすかよッ!」

 そう口にするチューバであったが、どんな攻撃であってもバトラズとモンガの『チーム一鶴』のトップ2に防がれてしまうために、ほとんど意味はない。


「さて、他の皆は移動したな」

「俺達も行こう」


 バトラズとモンガの2人は、一瞬だってチューバとマフィンの2人から視線を離さず光り輝く時空の結界の中へと入っていき、その光を身に包んで消えていった。


 閃光の中に入ることと暗闇に中に入ることは、明るさとしては全く逆だが、他人から見えなくなるということは全く同じなのだ。


 ───であるからこそ、カゲユキの「苦肉の策」による奇襲は成功する。


「待てッ!『チーム一鶴』!」

「そんなに恋しいのなら、置き土産をやるよッ!その身に刻んで帰りやがれッ!『羅針盤・マシンガン』ッ!」


 "ドドドドドド"


 その言葉と同時、チューバの体を穿つように放たれるのは、オルバの能力である『羅針盤・マシンガン』であった。

 無論、チューバほどの強さを持つ魔神であれば、こんな攻撃は致命傷どころかかすり傷にすらならず、すぐに『透明』が何らかの回復能力に変換し、無傷の状態に戻っていくだろう。こんな攻撃は、ただの足止めにしかならない。


 ───が、それでいいのだ。足止めごときの攻撃だから、上手く行く。


「ここは任せろ」

 そう口にして、攻撃───もとい足止めを食らうチューバの横を通り抜け、時空の結界へと迫っていくのはマフィン。


 きっと、一矢報いて一泡吹かせたつもりのオルバを殺すつもりなのだろう。

『羅針盤・マシンガン』を放ったため、オルバの大体の場所がマフィンにはバレている。

 であるからこそ、マフィンはオルバに即死級の攻撃を食らわせんとその最強の拳を振るい───


「俺は負けない。絶対に勝つ」

「えぇ、憎らしいけどアナタの勝ち逃げよ。『回収』」

「───ッ!」


 その言葉と同時に、マフィンの姿が26の世界から消える。

 27の世界に移動したのか?───否、27の世界にもマフィンの姿はなかった。

 アジトに帰ったのか?───否、どの月光徒のアジトにもマフィンの姿はなかった。


 では、マフィンはどこに移動したのか。

 それに対する問いの答えは簡単だ。マフィンは、アイラの能力である『回収』で、異空間に移動させられた。


「トドメがさせないなんて...こうも辛いことはないわ。勝ち逃げを許すから、もう一生私達の目の前に現れないで」


 異空間に飛ばされたマフィンが、帰ってくることは不可能である。

 入れることはできても、取り出すことはできない『回収』においては、どんな能力を使用しても戻ってくることはできない。


『不死』をも仕留めたその『回収』は、月光徒の幹部であるマフィンすらも、再登場不能にまで陥れたのだ。



 ───そして、オルバとリミアがチューバを気に留めずに背を向けて、26の世界を後にしたのであった。



『チーム一鶴』が敗北し逃亡したため、月光徒の勝利である。

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