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第910話 因縁の再戦

 

付加価値(アディショナルメンツ)』の『陸』であり『風月鬼(ヴァンパイア)』とも呼ばれる紅蓮の髪を持つ吸血鬼───シュベックが、『チーム一鶴』の非戦闘員であるリミアを襲いかかっているところに乱入してきたのは、1人の戦闘員───オルバであった。


「───またこの2人...」

 シュベックは、吸血鬼であるために陽光から体を守るようにして日傘を差しながら、2人の挑戦者(チャレンジャー)に対してそんなことを口にする。


「前回はいいところで逃げられちまったが、今回は絶対に殺してやるよ!」

 オルバは、この隕石の落下をシュベックの能力である『愚問な拷問(バッドコメンテーター)』によるものだとは思っていない。月光徒の別の誰かが、何らかの能力で隕石を降らしたのだ───そう考えていた。

 であるからこそ、いつシュベックとの戦闘に邪魔が入るからわからないから、早めに倒しておきたいところだ。


「───先手必勝!『羅針盤・マシンガン』ッ!」


 ”ドドドドドド”


 シュベックに対して放たれる『羅針盤・マシンガン』。前回、シュベックとの戦いは陽光の入りこまない室内で行われたが、今回は屋外だ。

 シュベックに有利な室内は、もう既に隕石で潰されてしまっている。


 であるからこそ、吸血鬼であるシュベックは戦闘する環境だけでもかなりのデバフになるはずなのだが───


「まだまだね」

 そう口にして、軽々とその攻撃を避けるシュベック。


「やっぱ、このくらいじゃ死んでくれねぇか...」

「失敗作同士、デッドヒートしましょう」


 シュベックはそう口にする。陽光の前にでも引きずり出せれば、シュベックを殺すことなど余裕だ。

 だが、それができないようだった。


 優雅にその日傘を差し、優美に瓦礫の上を歩く美女。

「やっぱり、強いね...」

「あぁ、そうだな。リミア、無事だったか?」

「うん、ギリギリ大丈夫」

 リミアはそう口にして、先程まで縛られていた首を擦る。そこには、赤い跡ができていたが死にはしなかったようだった。


「次は殺す。次は」

 そう口にした直後、リミアとオルバの後方に現れたのは十字架。


「───ッ!これは!」

 後方に現れた十字架を見て、2人は察する。

 シュベックは、2人を磔にしようとしているのだ。


「磔にした状態で始まれなかったか、失敗したな...」

 そう言葉を紡ぐシュベック。どうやら、完全に成功していれば2人はもう既に磔になっていたらしい。


「でも、この十字架は自由操縦。アナタ達を捕らえるまで動き続ける。

「んなの知るかッ!『羅針盤・マシンガン』!」

 そう口にして、オルバは十字架に向けてマシンガンを放つものの、それは全て弾かれる。


「───ッ!攻撃が効かないだと!?」

 オルバは、銃弾が通らない十字架に驚く。そして、十字架はオルバに接近し、オルバのことを捕らえて───


「───グッ!捕まった!」

 そう口にするオルバ。四肢は杭に突き立てられ、肉を穿たれ骨を貫通させられる。


「───んだよ、これッ!痛ぇ!」

「オルバさん!きゃああ!」

 その直後、リミアも磔の餌食になってしまう。同じように手足を杭で突き刺され、肉体を貫通する。


「───ぐっ、きゃあああ!」

 その痛みに耐えかねたリミアは、思わず叫び声をあげてしまう。


「どうか、外す方法を考えねぇと!」

 そうは言っても、手の甲を外側にされているので、『羅針盤・マシンガン』を放ってシュベックを攻撃して能力を解除させる───という方法も無理。


「いや、これなら!」


 ”ドドドドドド”


 その直後、十字架に向けて大量の銃弾を放つオルバ。球が十字架を貫くことはないから何の意味もない行為───だと思ったが。


「杭が、抜けていく...考えたわね」

 シュベックは、磔にされているオルバが、手と十字架の間に大量の銃弾を入れることで、強制的に空間を作り、杭を抜くという方法を用いたので、驚いてしまう。


 1本抜れば、残る3本は簡単だった。


「よっしゃ、俺は自由になった!リミアは、今助ける!」

 そう口にして、オルバはリミアから4本の杭を抜く。2人共、手と足には大きな穴が空いて来ていて、かなり痛々しいものの、自由に動けるようにはなった。


「───あーあ、抜け出されちゃった。失敗、失敗」

 シュベックはそんなことを口にして、ため息をつく。


「私の能力、ほとんど通用しないみたいだから、肉弾戦で行こうかな。普通に」

 その言葉の刹那、日傘で陽光から身を隠したシュベックが、オルバに接近して、オルバの顎を蹴る。


「───うがッ!」

 オルバは、それを避けることもガードすることもできずに、そのまま後方へ吹き飛ばされてしまう。


「───私、月光徒の中じゃ目立てないの。周囲が強すぎるから。私は平凡な少女なの」

 シュベックは、少し悲しそうに語る。


「全然平凡じゃねぇ...周囲がおかしいだけだぜ、全くよ...」

 オルバはそんなことを口にして立ち上がる。そして、その双眸でしっかりとシュベックのことを捕らえたのだった。


「お前は強い。俺がそれを保証するぜ」

 オルバは、そんなことを言う。心配するように、リミアはオルバにへと近付いていく。


「───が、そんなお前を俺を超えていく」

「どこからそんな自信が湧いてくるのかしら。私もアナタも失敗作だってのに、相違点があるみたいね」


 オルバのそんな宣言を、冷めた言葉で返すシュベック。

 シュベックとの因縁に決着が付く時は、近いだろう。

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