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第908話 強襲する悪意

 

 約束通り、モンガ・ステラの2人とそこに強襲してきた悪意───チューバとの戦闘に注目していく。

 モンガの剣技により、噴火したか火山かのように瓦礫が盛り上がっている場の中心には、人が生活できるだけの空間があった。


 10畳ほどの大きさではあるが、人が生活するには───人と人が対決するには丁度いい場所になったモンガとステラのいる空間に襲撃してきたチューバは、警戒する2人に勝負を申し込まれる。

 もうすぐに太陽が沈む。かなり暗くなっているようだが、相手はそんなことなど気にしていないようだった。


 ジャッカルは基本的に夜行性だし、モンガに対しては暗さなど大した障害にはならない。

 だが、それはチューバにとっても一緒だった。


「行くぞ。散る気はできたか?」

「───咲き誇る自信ならある」

 その言葉と同時、両者が動きだす。その後方に立っていたステラが驚き戦闘に入ろうか思案するものの、すぐに自らが任されたであろうことを察し、魔法を行使する。


「───『手刀(ハンディナイフ)』!」

 チューバは、自らの6本ある腕の内の2本を刀に変化する。


 ”キンッ”


 ”キンッ”


「───双剣か...面倒な相手だな」

 2本の刀に変貌した腕を振るい、モンガの攻撃を受け止め反撃するチューバ。

 最高で、チューバは自らの腕の全てを───要するに、6刀流にまですることができるのだ。

 いつ3刀流以上になるかわからない以上、モンガは果敢に攻めなければならない。


 モンガだって、流石に6刀流を相手にするのは厳しいだろう。であるから───


「全てを終わらせる。モンガ剣舞」

 その言葉を聴き、チューバは身構える。2本の刀を構えて、「4の舞 懺悔」に備えて───


「5の舞 即発」

 刹那、放たれたのは神速の突き。周囲の全てを斬り伏せる「4の舞 懺悔」が来ると思ったが、放たれたのは突き。


「───」

 だが、チューバは焦ること無く己の『透明』という、好きなように能力を変更できる能力を公使する。


「『腹心の死』」

 モンガの突きがチューバの喉に刺さると同時、空間が割れる音がする。


「何が───」

 割れた空間の先にあったのも、何も変わらない世界であったが、突きによって世界が割れたのは確かであった。


「『腹心の死』。世界を1度、剥くことが可能」

 チューバが、そう口にして『腹心の死』の能力を話す。


「剥いたら───何が起こる?」

「なにも」

 ただ、「世界が剥ける」だけ。「剥く」という行為に意味はないし、「剥く前」と「剥く後」で世界の何かが変わるわけでもない。


「心機一転、一新する。何も変わらないとされているが、無限に繰り返していけば、世界はいつか消滅する───『腹心の死』は特別な能力だ」

『腹心の死』は、その世界の寿命を縮める能力なのか───それとも、何か大きな因果に関連する能力なのか。

 モンガにはわからないし、チューバも詳しくは知らない。もちろんステラは知る由もなかった。


「───戦闘続行ッ!『手刀(ハンディナイフ)』」

 再度、チューバは『手刀(ハンディナイフ)』を発動し、その両手を刀に変える。が───


「目眩ましですッ!」

「───うごっ!」

 その直後、能力を使用し砂をかき集めていたステラが、タイミングを見計らってチューバの目に砂をばらまく。たとえ避けられたとしても、一瞬の気を引くことができる。いや、一瞬ではなく半瞬かもしれない。


 ───が、たとえ半瞬であったとしても構わない。


「感謝する、ステラ」

 その直後、チューバの腹部をバッサリと斬りかかるのはモンガ。その斬り口からは、ゴボリと内臓がこぼれそうになるのを、必死に抑える。


「腹が、破け……っ」

 焦ったように腹を抑えるチューバ。そのまま、絶命し───




 ───ないというのは、火を見るよりも明らかだろう。


「『内臓のダンス』」

 その刹那、ステラの方へ伸びていくのはチューバの腸であった。人体の色を目の当たりにして、ステラの顔は青ざめる。

 人の死体を見るのとはまた違う、恐怖に塗れた色をしていた。


「───う...」

 ステラが、その腸に恐れをなし、ガードができないと察したモンガは、すぐに刀を腸の方へ伸ばしてなんとか断とうとする。

 その刃が腸に届き、その腸を切り落として───



「───ッ!」

 その時、腸をグニャリと曲がってモンガの刀を受け止める。


「『表面腸力』。腸に薄い膜を敷くことで、お前の攻撃を無力化した」

 腹に穴が空きながらも、優しく解説してくれるのはチューバ。


「───ッ!」

 そのまま、チューバの腸はモンガの刀を絡める取るように動いて、モンガの刀を奪おうとする。


「───クッソ、能力のコンビネーションが邪魔だ!」

 そう口にするモンガ。チューバは、『内臓のダンス』・『表面腸力』・『内臓のダンス』で能力を公使することで、腸を守りつつ動かせるようにしていたのだ。

 だが、これはまだ2つの能力だけのコンビネーション。


「この刀は、俺が貰うッ!」

「───ッ!」

 そう口にして、チューバはモンガから刀を奪い取る。そして、腸を体の中にしまい、何らかの能力で回復したのだ。


「モンガさん!」

「すまない、ステラ。刀を取られた...」


 モンガは悲痛そうにステラに対して謝罪をする。チューバを殺すには、一撃で命を奪わなければならない。

 だが、モンガの武器である刀はチューバに奪われてしまった。


「さぁ、勝負を続けよう。この刀は使わせてもらうぜ。『八刀身』」

 チューバはそう宣言する。そして、それと同時に刀の刃が人間の身長並みに伸びたのだった。

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