第888話 第二次境内戦争 ─孤島─
『チーム一鶴』ユウヤ・バトラズ・モンガvs『ゴエティア』序列32位アスモデウスの大群。
その戦いの結末を見る───その前に。別の戦場の結末を見ておきたい。
勝っても負けても、アスモデウスとの戦闘は今後の重要なキーとなる。
であるからこそ、最後の1つである戦場───ガープとの戦いを先に見ておくのだった。
これは、『チーム一鶴』とガープを取り巻く、25の世界の全ての因縁を解消するための戦闘───。
***
アスモデウスが『破滅の一発』を同時発動させるよりも、数分か前。
『ゴエティア』序列30位のフォルネウスの能力である『蛸壺』により、俺とオルバ・イブ・ステラ・リミア・フサインの6人と、『ゴエティア』序列33位であることが判明したガープの計7人は、絶海の孤島へと強制的に移動させられる。
「ここは...」
遠くに、島が見えることはない砂浜。絶海の孤島ではありそうだが、絶壁や絶崖があるような絶体絶命な状況では無さそうだった。
「───って、ガープ!お前...」
俺は、目の前にいるガープに露骨に嫌悪感を見せる。
もう既に、フォルネウスの能力である『奪りす魔性』の効果は無くなっていた。いや、無くされた───が、正しいだろうか。
こちらの意思とは関係なく、半強制的に能力が解除されたことが、感じ取れた。
それほどまでに、唐突な印象変化であったのだ。わざわざ解除しなくてもよかったのに、解除したのには何か理由があるのだろうか。
まさか、俺とガープが敵対していないと思っている?
いや、それだとしてもわざわざ解除する必要はない。
「ガープ、何が望みだ?」
「お前の命だ」
「───了解した。闘争がお望みか」
死んだはずのガープではあるが、俺は対して驚かない。
この世界での死は、地球と比べると生き返るのが容易だ。それに、能力があれば自分と全く同じ姿の死体を作ることもできただろう。
───今思えば、ガープにも結構怪しいところはあった。
能力をひた隠しにしていたし、ノースタンとバチバチに戦争した俺達に何の恨みもなく協力を求めてきた。
「君達に、私のことが殺せるかな?」
「残念だな。俺達の旅路は、仲間割ればかりだ」
月光徒にスパイとして入ったカゲユキのことではない。
『ゴエティア』の幹部であることが発覚した、クロエのことだ。
19の世界で分かれてから、一度も俺達は姿を見ていない。
どうやら、俺を助けてくれたのでできれば敵対はしたくないけれど、それでもクロエが『ゴエティア』だと言うのであれば協力関係は結べない。
「───最後の質問だ。私のことは好きか?」
「好きだった───さ。だが今は、少し嫌いだ」
「そうか。『愛哀』」
「「「───」」」
「ガープ、今何を?」
「気にするな」
「そ、そうか...」
俺は、ガープに交友的な態度を取る。ガープは嫌いではない。もちろん、大好き───というわけでもないが。すると───
「───ここであったが百年目。殺してやるよ、ステラ」
「ステラのことを殺せるだなんて思わないでください。それに、死ぬのはアナタですよ、イブさん」
その直後、恋人であったはずのイブとステラの2人が、急に殺し合いを始める。
「唸れ、大地───ッ!使えない!?」
「残念ですね、ここは砂浜!イブさんの大地の魔法の出る幕はありません!」
「───クソッ!」
「おい、どうした。何があった...」
「これが、私の能力。『愛哀』の影響だ」
「そうなのか...」
愛哀・・・憎んでいる人物を愛おしく思わせ、愛している人物を憎ませることが可能。
「もしかして、俺にもかけたのか?」
「そんなことない。私達は仲がいいからな」
「───そうか」
リューガはそれで納得しているが、ガープはリューガ───どころか、その場にいる全員に『愛哀』を使用しており、憎愛の感情が逆になっている。
だけど、一番敵対しているのはイブとステラであるから、こうやってわかりやすくなっているのだろう。
「───まぁ、俺はアイツラのことがどっちも嫌いだからよ」
「漁夫の利か?」
「あぁ、だが他の2人もそれを狙ってそうだからな。動くのは様子見だ」
俺は、そう口にして俺と同じように2人の戦いを見ているだけのオルバとリミアの2人のことを見る。
ここで攻めていってもいいが、この砂浜はステラの独壇場だ。相手のフィールドで戦う必要はない。
「イブの大地の魔法も強いが、今のステラには勝てないはずだ。だから、イブが倒された後、元の世界に戻ったところでステラを殺す」
「死ね、ステラッ!」
「そっちこそ!」
そんな殺し合いの傍ら。息を口から漏らしながら、苛立った顔でガープを見る男が1人。
「───憎い。憎い、憎い、憎い!殺す、殺す殺す、ぶち殺すッ!」
刹那、俺の横に立っていたガープに対して襲いかかるのはフサイン。
「───ッ!」
「ガープ、俺はお前をぶち殺すッ!」
「まさか、私を『ゴエティア』と知って尚ッ!」
これは、ガープの読み違い。
自分のことを、「皆嫌っている」という想像から生まれた、読み違い。
だが、かつての友であるフサインは違った。
ガープが生きていることを心の底から喜び、ガープに心酔しきっていた。
強く固く結ばれた、男同士の友情。
───何人にも破れない、その友情が『愛哀』によって裏返される。
「ここであったが100年目!貴様の首は俺が切り落とすッ!」




