表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
914/1070

第883話 第二次境内戦争 ─母親─

 

「『蛸の内臓(オクトポンド)』」


 刹那、『チーム一鶴』の5人に───マユミとカゲユキにペトン・アイラ・セイジの5人に対して迫りくるのは、巨大なタコ足。


 蛸の内臓(オクトポンド)・・・巨大な8本の蛸足を作り出すことが可能。


「───」

 フォルネウスに対して、仲間───だと持っている以上、マユミやカゲユキは敵対しないし、これが攻撃だとも思わない。きっと、何か楽しいことを見せてくれるのだろう───そう思っているだろう。


 これが『奪りす魔性』の能力の効果であり、厄介な点である。

『奪りす魔性』の敵対をなくす───という能力は、地味見えて強い。

 だって、殺す寸前にこの能力を付けば、敵対を解除できるのだから、すぐにその首を刎ねることができてしまうのだ。そして、ある程度のことはナーフされる。


 そんな能力がかけられていたからこそ、判断が鈍ってしまう。

 誰も、何も行動できないまま、巨大なタコ足と地面に挟まれてしまい───


「喰らい尽くせ、ファイヤー」


 誰も動かないはずの、敵対していないから攻撃できないはずの『チーム一鶴』が一人、動く。


「え、え...」

 フォルネウスの焦ったような声が聞こえる。襲いかかったタコ足は、質量を持つ炎に押し返され、その弾力のある肉体を燃やしている。


「どうして...敵対しないはずなのに...」

 フォルネウスは困ってしまう。敵対心を無くす能力ではあるが、疑念や不満は通常通り持たれてしまう。


「ママを傷つけようとするやつは、仲間であろうと赦さないでちゅ」

 驚くフォルネウスに対し、そう口にするセイジ。


「ちょっとセイジ!フォルネウスさんに何してるの!」

「え、でも...」

「ほら、セイジ。ちゃんと謝って!」

「───ごめんなさい、でちゅ...」

「は、はい...こちらこそ説明もなく勘違いさせるようなことをしちゃって、えと...ごめんなさい...」


 フォルネウスは、思案する。

 眼の前にいる魔導士は強い───と。


 これまで、親しい部下の前でしか偉そうな口を叩かず、戦闘はほとんど部下に任せ、自分が戦う時も『奪りす魔性』に頼って、殺す瞬間の警戒心を無くしていたので、実践経験はほとんど無いに等しい。


 だから、セイジの魔法を見た瞬間にビックリしてしまった。これが『先祖孵り』の異名を授かったセイジの力なのか───そう理解した。


「それで、何をしようとしたんでちゅか?ママを───ぼく達を傷つけようとしてるように見えたのでちゅけど」

「え、えっと...それは...」

「セーイージー?フォルネウスさんを困らせちゃ駄目でしょ?」

「ごめんなさい...」

「ごめんなさいと言うのは簡単!セイジはいつも反省してない!」

「───」


 フォルネウスは、それと同時にマユミが馬鹿で助かった───そう心の底で思う。

 まだ、『奪りす魔性』はマユミには聞いてるのだ。


 だが、セイジには効果が薄れていると思われるだろう。

 フォルネウスは、自分の後方にあるタコ足をうねらせながら、どうすればいいのか思案する。


「───それで、フォルネウスさん!次は何を見せてくれるんですか?」

「え、え、えぇっと...」


 マユミに話を触れられるフォルネウス。

 キラキラとした純粋な目でマユミとアイラは、フォルネウスのことを見ていた。


「───言葉にするのは難しいんだけど...と、とりあえず見てもらえればわかるから...」

「そうなの?」

「う、うん。でも、大変な技なんだ。だから、さっきみたいに皆の方に倒れちゃったらごめん...」

「危害を加えようとしたわけじゃないんでちゅか?」

「当たり前でしょう!?フォルネウスさんが私達を攻撃する意味なんかないのよ?」

「どうだかな...」


 その発言から考えて、セイジとカゲユキに対する『奪りす魔性』の効果は薄れてきているようだった。

 ペトンが信じているのかどうかは、わからない。


「ごめんなさいね、ウチの馬鹿な男子陣が。カッコつけたがりなのよ」

「ぼくは違いまちゅ」

「セイジは迷惑なだけ!魔法杖没収!」

「ちょっと、返ちてくだちゃい!」

 セイジは、魔法杖をマユミに取られてしまう。これで、セイジは無力となった。チャンスは今。


「そ、それじゃもう1回...」

 そう口にして、フォルネウスは偶然を装って『蛸の内臓(オクトポンド)』で生み出したタコ足での攻撃を試みる。


 今回は、魔法でも押し返されないために3本ほど使用するつもりであった。

 上空で、何かを作っているような不利をして、タイミングを見極めて───


「───あ!」

 まるで、失敗したかのようにそんな声をわざと出す。避けられるものなら、避けてみろ。

 そう言わんばかりの宣戦布告。


『チーム一鶴』の5人に対して、倒れるタコ足。

 先ほど妨害してきた、セイジは魔法杖を持っていない。

 だから今回は止められない───


「───んん?」

 だが、『チーム一鶴』の5人に激突する前に『蛸の内臓(オクトポンド)』は止められる。


「『我武者羅ガム』」

「また失敗、したみたいだな。俺達の殺害の」

「───ッ!」


 ペトンが能力を使用し、カゲユキがそう口にする。

 もう既に『奪りす魔性』の効力は、『チーム一鶴』のどこにも残っていないようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ