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第881話 第二次境内戦争 ─魔性─

 

「───ガープ?」


 俺は、目の前に現れた2人の人物の片割れ───屋敷を燃やされて死亡したはずの、23の世界で知り合い、協力関係を築くことになっていた人物の名を呼ぶ。

 ガープを知る俺やイブ・バトラズなどは目の前の存在に困惑する。オルバなどは、ヒストリカの持つ『いとも悲惨な(ヒステリック)自分語り(ヒストリー)』を知っているから、偽物ではないかと疑うこともあった。

 そして、ガープと親交が深くて親友という立場にまで上り詰めていたフサインは、驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。

 だからこそ、俺が目の前にいるガープと会話をする。


「ガープ...生きていたのか?」

「あぁ、久しぶりだな。『チーム一鶴』の皆、そしてフサイン」

 ガープはそうやって声をかけてくる。だけど、まだ本物かどうかわからない。


 だって、俺達はガープの死体を見たのだ。

 驚いたような顔をして死んでいるガープを、俺はこの双眸でハッキリと見たのだ。

 ガープの死体の処理を、俺は屋敷の持ち主であるスタンプさんの従者にまかせて、23の世界に行ったけれども、ガープが生き返ったという報告も息を取り戻したという報告も聞いていなかった。


「ガープ...死んだと聞いていたが...生きて、いたんだな」

 そう口にして、フサインはガープの方へと走っていく。そして、ガープへと抱きついた。


「あぁ、約束したのに心配させてしまったな。フサイン。すまなかった」

 ガープは、そう口にして謝る。カゲユキ達には、もう既に25の世界での経緯を全て話しているから、ガープのことは知っている。無論、会うのは今日が初めてだけれども。


「リューガ、ガープは死んだんじゃなかったのか?」

「あぁ、俺もそう思っていた。だから、偽物かもしれない...」


「リューガ、私は偽物じゃない。ちゃんと、ガープだよ。23の世界のノースタンでカーン・バーンに仕え、敗北した後にムーンライト教を滅ぼすために『チーム一鶴』の君達───リューガ・オルバ・イブ・ステラ・リミアの5人に力を借りた。そして、『妖精物語(フェアリーテイル)』と勝負をすることになった。全部覚えている」

 ガープが語る事実は正解だ。だけど、それはガープの略歴を調べればすぐにわかること。何か、ガープであることを証明できる何かがあればいいのだけれど───


「───あ...あの...再会の水を差すようで悪いのですが...」

 そうやって、感動の再会の間に入ってくるのは、ガープと同タイミングでやってきたもう1人の来訪者。

 オドオドとした声で、自信なさげにガープへと声をかけた。


「あぁ、フォルネウスさん。すみません。紹介をしていませんでしたね。私の()仲間の『チーム一鶴』です」

 ガープの言う「()仲間」というところに、少し違和感を覚えた。


「そ、そうなんですか...ごめんなさい、こんな大事な再会の時に...私なんかがいて...」

「えぇと、皆にも紹介が必要だね。この人はフォルネウスさん。この人は───というか、私もなのだが、『ゴエティア』のメンバーだ」

「「「───ッ!」」」


 唐突すぎるカミングアウト。

 それは、俺達に対する宣戦布告でしかない。


「ご、ご紹介に預かりました...『ゴエティア』序列30位の、フォ、フォ、フォルネウスです...ひ、人見知りで緊張していますが、よ、よろしく、お願いします...」

「リューガ!」

「わかってる、相手はガープのフリをしてる可能性が増えた、戦争だッ!」


「『奪りす魔(カリスマ)性』...」

「「「───」」」

「リューガ、落ち着いたか?」


「あぁ、すまない。少しビックリしちゃってな。まさかガープが『ゴエティア』だったとは思わなかったよ!」

「ははは、そうか。結構色々なところでヒントをあげていたつもりだったのだけれどな」

「いやぁ、そうだな。でも、ガープは仲間だ。『ゴエティア』がどうとか関係ないだろ?」


 俺は、ガープに対してそう口にする。

 そう、ガープが『ゴエティア』とかどうとか関係ない。今、目の前にいて生きてくれているだけで充分に嬉しいことなのだ。


 奪りす魔性・・・自らに敵対する人物が、敵だと認知しなくなる。効果は一度きり。


「それで、なんだが。とりあえず『チーム一鶴』には感謝したい。なにせ、『ゴエティア』の半分を殺した月光徒に大打撃を与えることができたんだから」

 どうやら、ガープは19の世界で起きた、月光徒vs『ゴエティア』vs『チーム一鶴』の三つ巴合戦のことに対して、気にしていたようだった。


「大打撃って?」

「月光徒は、魔女を復活させるための研究を行っていて、ムーンライト教として公然にお金集めをしていた。それに、ここには人工精霊もあったからな。それらの両方を壊せたのは、アジト襲撃と同等の被害を被ったことになるだろう」

「それも、そうだな」


「───だが、まだ心残りはあるんだ」

「なんだ?協力できることなら協力するぞ?」

「ありがたいな。三つ巴合戦のことは、リューガも覚えているだろう?私は、私達は『ゴエティア』側として、月光徒を潰すことに成功した。だけどな、まだ『チーム一鶴』は潰せていないんだよ」

「───それって?」


「お前ら『チーム一鶴』を殺す!」

「『蛸壺』」


 ガープの宣言と同時に、フォルネウスが『蛸壺』という能力を使う。それと同時、俺と・オルバ・イブ・ステラ・リミア・フサインの、25の世界に最初にやってきたメンバーは、ガープと一緒に絶海の孤島へと連れてこられたのであった。


 蛸壺・・・相手を、絶海の孤島へと強制的に連れて行くことが可能。

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