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第873話 第二次境内戦争 ─受肉─

 

 全滅。

 25の世界にいる月光徒の全滅。25の世界の少数精鋭である『妖精物語(フェアリーテイル)』の全滅。ムーンライト教の幹部の全滅。


 ムーンライト教の教祖であり、ムーンライト公国の国王であるサンバードの味方と呼べるような人物は、次から次へと死んでいく。

 殺しているのは、『チーム一鶴』と『ゴエティア』と、『チーム一鶴』に心を動かされた名も知らぬシンパ達なのであった。


 こうして、25の世界でのサンバードの仲間は少しずつ減っていって、ついに残っているのはサンバード唯1人にまでなってしまった。

 そして、蜜月神社の本殿の中で、リューガ・マユミ・カゲユキ・リミア・ステラの5人は、サンバードを追い詰めることに成功する。


 そう、追い詰めたのだ。そして、しっかりと警戒さえも怠らなかった。が───


「───受肉...だと?」

 服装は変わらずとも、その容貌や雰囲気はガラリと変わったサンバードに対し、カゲユキはすぐに受肉したと理解する。

 受肉した云々はわからずとも、体を受け渡した存在に関しては、この場にいる全員が知っていた。

 そう、蜜月神社の本殿の入り口で液体漬けにされていた名も知らぬ人物───否、人工精霊であった。


 人工精霊の受肉は、自らの命を落とす可能性すらある行為。だから、保身に走りがちなサンバードはその手段に出ないとも思っていたが、こうして『チーム一鶴』に囲まれても勝てないと自覚していたのだろう。


 そこに『妖精物語(フェアリーテイル)』への失望が含まれるかはわからずとも、シュバルツが殺されたこともあり、覚悟は決まっていたのかもしれない。


 兎にも角にも、サンバードは自らの体に人工精霊を受肉させたのだった。


 尚、そんなことリューガは理解できていない。

 受肉も人工精霊はほとんど何も知らない状態だ。

 それこそ、人工精霊など9の世界の季都で少しその名前を聞いた───と言った感じだろう。


 リューガがわかっているのは、目の前にいるサンバードが、その姿を変えたと言うことくらいだ。

 そして、その姿を変えた人物が、体を動かせなくなるほど圧倒される敵であることも、わかっただろうか。


 ***


「───受肉...だと?」

 俺の目の前にいたはずのサンバードの姿が変わった。

 何もわからない中で、カゲユキがそんな言葉を口にする。


 俺は、目の前にいるサンバードに目が離せなくなる。魅了されているわけではない、圧倒されているのだ。

「受肉───ってなんだ?」

 俺は、カゲユキに問うてみる。


「それは───」

「いや、いい。発生の練習を兼ねて私が説明しましょう。私は、人口精霊です。人口精霊はわかりますか?」

 カゲユキから、発言権を無理矢理にでも奪い取ったのは、サンバードであった。いや、受肉と言っていた以上、もうサンバードではないのかもしれない。

 サンバードの体を乗っ取ったその美男子が紡ぐ言葉に、俺は「わからない」と口にして小さく首をふる。


「喋るヒヨコは珍しいですが、こっちには喋らない人間も喋る言葉の意味がわからない人間も喋れなくさせる人間もいましたし、関係ないですね。では、説明しましょう。人工精霊とは、その名の通り人の手で作られた精霊です。ニルさんの言葉を借りて、地球とやらの言葉で表すのであれば"超高性能アンドロイド"とやらが正しいかもしれません」

「地球を知っているのか?!」

「地球以外も知ってます。私のかつての仲間が。私は知らないので言及しないでくださいね」

「───」


「話が横道に逸れましたが、戻しましょう。人工精霊の力を手に入れるために、サンバードとやらは私を体に受肉させたようです。私が壊れ消え失せればサンバードの肉体は元に戻ります。だから、消え失せる前に私は君達を殺さなければならないようです」

 それと同時、サンバードに受肉した人工精霊から、悍ましいほどの殺気が放たれる。


 放たなくとも、強者であることは見て取れたのに、こうして殺気を放たれると尻込みしかできない。

「私は原初の魔女マリアの6人目の弟子───キリエ・ショコラティエを模倣して作られた人工精霊です。その強さは、本物の2の10乗の1024乗にも及びませんが、よろしくお願いしますね」

 要するに、1024の1024乗。目の前にいるキリエ・ショコラティエでさえも相当強そうなのに、本物はこれ以上なのか。


「魔女の話は15の世界でヌルから聞いていたが、こんなに強いとは───ッ!」

「おっと、ヒヨコさん。博識ですね。それで、どうします?選択肢は2つ。私に抵抗して死ぬか、抵抗せず死ぬか」

 キリエ・ショコラティエからそんな選択肢を突き立てられる。


「───決まってる、抵抗して殺すッ!」

「御見事」

「「「───ッ!」」」


 俺のその宣言と同時、キリエ・ショコラティエは手を叩きながら不敵な笑みを浮かべる。

 それと同時、部屋にいた俺達5人の体はそれぞれの方向へ吹っ飛んでいった。


「何を───ッ!」

「少し、肩慣らしを」

 俺達は、部屋の壁にぶつかり、なんとか遠くまで吹き飛ばされることを免れる。部屋の壁も、かなり凹んでいてあと少しで穴が開きそうだった。



 ───圧倒的強者、キリエ・ショコラティエの弱体化版人工精霊を前に、俺達は戦闘しなければならない。


 勝てるかどうかわからないが、俺達はキリエ・ショコラティエを倒さなければならない。

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