第867話 第二次境内戦争 ─覚醒─
いつも登校中に書いているのですが、今日はえげつない腹痛に耐えており執筆ができませんでした。
不屈の精神で、最悪の事態は避けれたのでよかったです。
そんな、諦めない心を持つキャラが活躍します。それでは、どうぞ。
『チーム一鶴』のツートップであるバトラズとモンガと、『妖精物語』の最強格であるオーガとの戦いは、全員が鬼神の血を覚醒させることで、続行することが確定した。
バトラズとモンガの胴に大きく付いてしまった袈裟斬りの傷は、バトラズの回復魔法で、全快とは言わないまでも止血をすることはできていた。
オーガは、まだまだ進歩していくバトラズとモンガの2人に対して喜びを感じていた。
だからこそ、こうして再度戦えることに心を震わせていたのだ。まだ、猛者と戦える───と、喜んでいたのだ。
それもそのはず、25の世界にはオーガを超えるような実力者はほとんど存在しない。
存在しているとしても、その半数以上は即死能力に頼ったチートのような感覚なのだ。オーガが戦いたいのは、肉弾戦も白兵戦も一騎当千できるような猛者だったのだ。
だからこそ、バトラズとモンガの2人はオーガを満足させるだけの有望株であった。
「───では、行くぞッ!」
オーガはそう口にして、両手でしっかりと刀を握りバトラズの方はと接近する。下から上へ、刀を押し上げその首を切ろうとする攻撃はバトラズと刀よって制止される。オーガは、すぐに切り上げる攻撃が失敗することを察して、すぐに刀を引いて擦れ合う金属音を立てながら、バトラズと距離を取ろうと企てる。
───が、オーガが逃げる先に向けて刀を振るうのはモンガであった。
「───ッ!」
「モンガ剣舞」
逃亡するオーガの命を刈り奪ろうとするモンガ剣舞。それにより、オーガはバトラズから引くだけでなくモンガの対処もしなければならないこととなる。
「2の舞 冷涼」
残酷な一閃。
無慈悲にもその首のみを狙い、その命を奪う強力な技。
「───おいおい、マジかッ!」
オーガは、咄嗟にその場で背を縮めて攻撃を避ける。そして、そのままエビのように後方に更に飛んで殺意のジャングルから抜け出した───
───と思ったが、すぐにその殺意というものはオーガへと襲いかかる。
「そうだよ、これこれ」などと、猛者と戦う感覚をオーガは心のなかで反芻し、嬉しそうな表情のまま刀を振るう。
襲来する殺意に対抗するようにその刀を振るう。ブンッと空を切るような音だけが響き、オーガの攻撃は誰にもヒットしない。
だが、これは最初から誰にも攻撃するつもりのない攻撃だ。これはあくまで、バトラズとモンガと距離を取る牽制のための一振り。
であるから、本命は次の一撃。
狙うは、バトラズ。
先程は、両肩から袈裟斬りをすることに成功したのだ。多少───いや、格段に、数倍は強くなったバトラズであれど、同じ技をすることは可能なはずだ。
だが、目指す場所は一緒だけど、そこに行きたく過程は違う。前回は、「∞」を描くようにして、刀を振るったが、今回は「8」を描くようにして刀を振るう。
聴いてるだけでは、縦か横かの小さな差かもしれないが、戦っている本人からしてみれば袈裟か逆袈裟か大きく変わってくる。
「───ッ!」
先程の袈裟斬りによりできた傷をなぞるように、オーガの刀は再度バトラズの体を斬る。
「2度は食らわねぇ!」
バトラズは、オーガの刀が振り下ろし切る前に、後方へ飛んで移動する。左胸に斜めに切り口が入ったけれども、それでも死亡するほどの傷ではないし、バトラズには回復魔法がある。
鬼神の血の覚醒により増えたバトラズの体力で、回復魔法を更に行使してその傷を埋めた。
「よくもバトラズを傷つけてくれたな」
後方に逃げたバトラズの代わりに、オーガの相手としてその体を動かしたのはモンガであった。
狙いは変わらずオーガの首で、強力な「モンガ剣舞」が、オーガにへと迫る。
「5の舞 即発」
モンガ剣舞の中でも随一の破壊力と攻撃範囲を持つ5の舞。モンガの必殺技とも呼べるそれは、正確無比にオーガの首を狙った攻撃。
「───ッ!」
オーガは、モンガの攻撃をなんとか避けるものの、首に紅い線が浮かび上がる。浮かび上がっただけで、まだその首は吹き飛んでいない。
「まだ、戦えるッ!」
そう口にして、モンガに対して刀を向けて、モンガの首を斬るために刀を振るう。名も無い一閃。
それは、モンガの首筋を捉えて───
「───っと!」
その刀を受け止めるのは、回復を早々に終えて割り込んだバトラズ。バトラズの刀とぶつかり、オーガの刀の動きは止まる。
そして───
「姫様、やっちゃってください!」
「勿論だ。モンガ剣舞」
「───まずッ!」
「6の舞 霹靂」
刹那、オーガの首が空に舞う。
バトラズとモンガを苦しめた猛者の、最後に見る景色。
それは、清々しいほどにキレイで、晴れ晴れしいほどに美しい。
「───殺されるのが君達でよかった」
オーガは、首だけの状態でそう口にして、そのまま地面に首が落ちる。
「───勝った...」
いくら鬼神だとは言え、首を切られれば死亡する。これにより、オーガに勝利したのだった。
「強者...だったな」
「あぁ、そうだな...これまで出会った中で、1位2位を争うぜ...」
バトラズとモンガはそう話し合う。
これまで2人は、指折りの猛者と戦ってきたけれども、今回のオーガは格別だっただろう。
きっと、月光徒の『付加価値』の中にいてもおかしくない実力だっただろう。
これからは、このレベルの猛者が次から次へと『チーム一鶴』に立ちはだかってくることになるのだった。




