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第854話 第二次境内戦争 ─勃発─

 

 ───これは、25の世界にて勃発した、月光徒とリューガ率いる『チーム一鶴』の、25の世界の覇権を賭けて戦った戦争の終着点とも言われる戦争である。


 舞台は25の世界にある蜜月神社。

 これまで何度も25の世界の少数精鋭である『妖精物語(フェアリーテイル)』に戦争を吹っかけては戦ってきていた『チーム一鶴』は、ついにここ蜜月神社で、その因縁から解き放たれることとなる。


 ───これから行われるのは、後に境内戦争と呼ばれる戦争。


『チーム一鶴』と25の世界の戦いの原点である最初に行われた境内戦争と区別するために第二次境内戦争とも呼ばれるこの戦争は、新しく配置された月光徒から派遣された門番の死によって幕を開く。


「───と、道は開けたな」

「ずっとここにいるわけにもいかないし、行くか!」

 俺達は、鳥居を潜っては先へ進む選択をする。俺達が進む参道の左右には木々が生い茂っておりどこから狙われているかわからない。などと、奇襲されることを考えていると───


「君達が...『チーム一鶴』だね?」

 強襲。


 そこに現れたのは、二足歩行をした顔面が鹿の人物。上裸であり、背中に翼を生やしている不思議な姿をしている彼は、リューガの中にあるルージョンの記憶にも登場しない人物であった。


「お前は...」

 俺の代わりにそうやって問うのはバトラズ。


「僕?僕がどうかした?」

「お前は何者だ」

「僕?僕はポゼッションだよ。『妖精物語(フェアリーテイル)』の『憑』さ」

 そこにいる鹿顔は、自らのことをポゼッションだと名乗る。だけど、ルージョンの記憶の中にあるポゼッションは、こんな姿をしていなかったはずだ。でも、ポゼッションは俺と同じ能力である『憑依』を持っているらしかった。まさか、俺以外にも『憑依』を持っている人がいたとは、初耳だ。


 だが、『妖精物語(フェアリーテイル)』ということは俺達の敵であることは間違いないだろう。

 遠くには神社の本殿に繋がっているであろう石造の長い階段が見えているこの場所で、俺達は接敵したのであった。


「君達はここに残ってもらうよ。先には進ませない」

 そう口にするポゼッション。


 ───現在、ポゼッションは『ゴエティア』序列34位であるフルフルの体に『憑依』していた。


 であるから、『憑依』に追加してフルフルの能力までもを操ることができるのだ。

 愚愚(グーグー)・・・睡魔を襲わせることが可能。

 愚者愚者薔薇薔薇・・・人の栄養を吸い取る薔薇を生やすことが可能。

 引き寄せ合う鉄と欠落(バグネット)・・・生物学上の男と女を引き寄せ合わせ、男と男及び、女と女を引き剥がす。

 暴風の芽・・・暴風を作り出すことが可能。


 こうして、ポゼッションを最初に置いたのも『引き寄せ合う鉄と欠落(バグネット)』により女性のみを先に暗殺してしまおうと言う考えがあって───


「───」


 ゾワリ───。


 言葉にならない恐怖が、ポゼッションの体を襲う。

 見えてしまったのだ。ここで、『引き寄せ合う鉄と欠落(バグネット)』を使用して、『チーム一鶴』の女性陣を自らの方へ引き寄せた際の末路が。


 ───そこにいるのは、1人の鬼神(オニ)


 その女の鬼神(オニ)を引き寄せたら、ポゼッションが何かをするよりも先に、その首を斬られてしまう。

 まさしく、死。


「───駄目だ、これは使えない...」

 そう口にするポゼッション。


 ───が、すぐにそれが違うことに気が付く。


『チーム一鶴』の女性陣の中で、一番前にいるのは魔法使いの女。であれば、ソイツだけを引き寄せるほどの力であれば、マユミだけを殺すことができるはず。磁力の調整なんかしたことはないが、やろうと思えば行けるはず───。


「『引き寄せ合う鉄と欠落(バグネット)』」

「「「───ッ!」


 ポゼッションは静かに能力を使用する。そして、ポゼッションの方へ引き寄せられていくマユミ。

「やった!」

「マユミ!」

 ポゼッションの喜ぶ声と、ユウヤのマユミの名を呼ぶ声。

 後は『暴風の芽』でマユミの命を刈り奪ればいいだけの簡単な作業だ。


「『暴風の芽』」

「させねぇよ、ウインド」

「───ッ!」


 直後、気がついた。マユミの背中に抱きつくようにして付いてきた1人の男の存在に。

『チーム一鶴』の他のメンバーと比べたら若くはない。三十路くらいの男が、マユミに抱きつきポゼッションに接近してきたのだ。


 そして、マユミを殺すはずだった『暴風の芽』が風魔法で打ち消されてしまう。

「んなっ...」

「逆回転の風をぶつけたんでちゅ。ママを傷つけるだなんて、許せる行為ではないでちゅ」

「マ、ママ?」

 ポゼッションは、何を言っているのかわからずに驚きの声を出してしまう。マユミの方が若いはずなのに、セイジがマユミのことを「ママ」呼びするのは意味がわからない。


「───リューガ、ここは僕に任せてくだちゃい」

 俺は、『引き寄せ合う鉄と欠落(バグネット)』により他のメンバーと反発し上空に追いやられているところを、セイジからそう声をかけられる。


「あぁ、わかった。ここは任せられるか?」

「もちろんでちゅ。ママをよろしく頼みまちゅよ」

 ポゼッションは、『引き寄せ合う鉄と欠落(バグネット)』を解除したのかマユミから離れられるようになる。


 そして、開始したのだ。


『チーム一鶴』セイジvs『妖精物語(フェアリーテイル)』ポゼッションの戦いが───。

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