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第849話 大脱走 その⑤

 

 月光徒のアジトからの脱走を企てる『チーム一鶴』の目の前に立ち塞がるのは、『付加価値(アディショナルメンツ)』の『弐』と『漆』であるエレンとノーラの2人であった。


 2人は、月光徒の幹部であった───というものの、20の世界にてリューガと戦闘して敗北し死亡したヴィオラの部下であり、2人がその部下の中でもトップワンツーの実力を持っていた。


「───が、私はまた能力を封じられるのか」

「ケケケッ!可哀想によッ!オメェの能力は確殺だからな。俺様は好き勝手暴れてやる!『螺子巻き鬼斬り』!」


 螺子巻き鬼切り・・・巨大な螺子と刀を具現化させることが可能。


 その言葉と同時、エレンの両手に具現化するのは巨大な螺子であった。金属でできているであろうその巨大な螺子は、もはや螺子としての役割を担わないほどにデカかった。


「螺子を使うが、『なかったこと』にはできねぇぜ?」

 エレンは、何を連想させるのかニヤリと口角を上げた後に、その動きを開始する。


「───ッ!皆、逃げろ!」

 モンガがそう指示すると同時、エレンの持つ螺子を受け止めるのは刀で受け取るのはモンガ。

 そのモンガの声に従い、ユウヤ達はエレンとノーラのいない方向へ逃げることにした。


「───ッ!」

 モンガの腕に、刀と螺子がぶつかった衝撃がやって来て、思わず退いてしまう。


「おいおい、そんなへっぴり腰で剣士が務まるのか?別にいいんだぜ?俺は殺傷力の少ない螺子で戦わず、普通に刀を使用してやっても」

 そう口にして、エレンは左手に持つ巨大な螺子を地面に突き刺し、左手に刀を具現化してみせた。


「刀も出せるのか...」

「あったりまえだッ!俺様の能力は貴様らみたいにヤワじゃねぇ!」

 そう口にして、エレンは右手にあった螺子を走って逃げていく他の『チーム一鶴』の方へと投げる。


「皆、そっちに攻撃が行くッ!」

 モンガは、逃げる皆を追いかけるようにして、螺子を止めようとするけれども、もう1本───地面に突き刺していたものを投げられて、それを止める動作を強要されてしまう。


「───クソッ!一本取り逃した!」

 モンガは、唾棄するようにそう口にする。逃げ惑う『チーム一鶴』は、その螺子に気付き───


「───って、螺子に誰か乗ってる!」

 いつの間にか、最初にエレンが投げた螺子の上に足を組みながら乗っていたのは、包帯巻きの女───ノーラであった。


「逃走など恥ずべき行為だ。闘争をしろ」

 そう口にして、ノーラは螺子から飛び降りる。踏み台にされた螺子は、そのまま逃げる『チーム一鶴』の数メートル前に落ちた。


「───ッ!一気にここまで来るとは!」

「急いで逃げよう!」

「逃すわけないだろう、会話が通じぬ雑魚ばかりだな」


「───ッ!向こうは任せるか...」

「あったりまえだ!俺様を無視するんじゃねぇぜ!」

 そう口にして、モンガに向けて刀を大きく振るうのはエレン。


「───ッ!」

 いつも通りモンガが刀で受けても、腕にやってくる痺れ。

 エレンは、規格外の強さを持ち合わせていたのだ。


「名を、エレンと言ったか?」

「───あぁ?そうだが、それがどうした!自分を殺す男の名を知りたくなったかァ?」

「いや別に。それなりに強い───そう思っただけだ」

「ンだとッ!」

 そんな会話を交わすと、更にエレンの剣戟は激しくなる。モンガの首を狙い、何度だって刀が迫ってくるのだ。


 ───攻撃を受けつつ後方に下がりながらの撤退。


 モンガはそんなことを考えてどんどん後方へ下がっていった。モンガ程の実力者であれば、エレンに勝利できずとも敗北することはない。手の痺れだって、次第に薄れてきているのだ。



 ───そして、モンガ以外の逃亡者は、ノーラの対策を思案しつつ、走って逃げていた。


「逃げれないから、私は炎なのだ」

「───ッ!」

 その言葉と同時、最後尾を逃げていたユウヤに対して、近接戦闘を挑んできたノーラ。


 能力を持っているような口ぶりであったのに、能力を使用しないのはそれが「確殺」の技であるからだろうか。

「───や、やめろッ!来るなッ!」

 そんなことを口にしながら、刀を振るユウヤ。無論、ある程度の狙いはあったのだろうけれど、全てが避けられてしまう。


「ユウヤ、なんとかしてよけろッ!『我武者羅ガム』」

「───ッ!」

 ユウヤに襲いかかるノーラの動きを『我武者羅ガム』で止めるペトン。


「ちょ、これで俺がくっついてたらどうしてたのさ!」

「なんとかしてたぜ!」

 ノーラにはベッタリとくっついた『我武者羅ガム』であるが、奇跡的にユウヤにはくっついていなかった。


 これも、ユウヤの幸運を引き寄せる体質───というか病気のせいだろうか。


「───ッ!逃げられる!『飛んで火に入る(ファイヤー)夏の無知(ダンサー)』」

 すると、どんどん『我武者羅ガム』が溶かされていく。


「───ッ!急いで逃げるぞッ!」

「合流だっ!」

 そう口にして、モンガも合流する。その後方からは、エレンも追ってきていた。


「よし、モンガとも合流できた!『我武者羅ガム』だ!」

 そう口にして、ペトンはアジトに蜘蛛の巣のようにして大量のガムを貼っつけて逃げていく。


 ───そして、『チーム一鶴』はアジトの外へと逃げ出すことに成功したのだ。


「ここまではとりあえず逃げれたな...」

「でも、アイキーはまだ回収できてないよ?」

「そうだな。また、取りに戻らないと...」

「えぇぇ?またあの敵に追われるんでちゅか?僕、いやでちゅよ...」

「だが、取りに行くしかない」

「いや、その必要はない」

「いや必要ある───って、誰だ!」


 自然に会話に入ってきたが故に、つい驚いてしまった人物。そこに現れたのは『付加価値(アディショナルメンツ)』の『×』であり『裏切り者(エネミー)』の異名を持つカールであった。


「初めましてではございませんが、自己紹介を。ネタバレですが、カールと申します!この先の展開を教えましょう、アナタ達はリューガさん達と合流できます」


 その言葉と同時、月光徒のアジトにいた『チーム一鶴』のメンバーは、そのまま23の世界まで移動する。

 目の前に現れた───正確には、いたのは、リューガ達であった。

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