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第80話 呆れ

 

 リカとワッケラカエンはまだ、下水管の中にいる。

「リカちゃん...大丈夫そうかい?」

「はい...大丈夫です...」

「ここにいてもいいけど、仲間は心配していると思うよ。早く帰りなさいよ...」

「でも...ここにいたいですし...」

「そうかい...いてもいいけど、私はあなたを仲間にはしないよ?」

「わかってます...でも...でも...一緒にいさせてください...」

「しょうがない...少しだけだよ!もう、すぐ帰らないと怒られてしまうから...」

「ありがとう...ございます...」


「喧嘩、なんでしたか聞いてもいいかい?」

「話します...話さないと...邪魔ですものね...」

 リカは一呼吸入れて話し始める。


「まず、私は1の世界というところ出身です。1の世界では、人間はヘイターという鬼神(オニ)に嫌われていて、1の世界全体で人間の差別は行われていました。なので、人間は1の世界では奴隷の扱いを受けていました...私も9歳の頃から農園で奴隷して無賃金で働いていました...」


「そう...それは大変だったね...」


「でも!私は誰からも見られていないところでは農園のみんなから優しくして貰えました!みんな私のことを考えてくれていました...ヘイターに逆らったらヘイターの目に仇にされて虐められることくらいみんな知っていましたし、私も知っていました...なので...建前上では、差別を受けていました...」

「ほう、それで?」

「その事を、リューガさん達に話したんです...そしたら、リューガさん達は農園のみんなのことを責めるんです!口々に悪口を言うんです!確かに私は肉体労働から解放されました!でも、受ける優しさはどこでも変わってなかったんです!なのに...悪口を言うなんて酷いと思うんです!」

「そうだね。リカちゃんが言ってることは正しいよ...リューガ?さんたちも悪くないし、農園の人たちも悪くない」

「えぇ...そうです...そうですけど...悪口を言われて...悔しいんです!辛いんです!」

「そうか...じゃあ、リューガさん達のいい所は?」

「えっと...強いところや...勇敢なところ...あと、正義感が強いところ...ですかね?」

「そうか...」

「えぇ...月光徒だって知ると、いつも戦っています...」

「そうかい...月光徒か...」

「あの...」

「どうしたんだい?」

「喋ったら、少しスッキリしました!ありがとうございます!」

「それなら、よかったよ...リューガさん達はここがわからないと思うから...帰りなさい?」


 リカの心の中は少しスッキリしていた。それは何故だろうか。ワッケラカエンに話したこともある。だが、少しリューガ達のことを呆れていた。リカは「無賃金労働」という言葉は響きが悪い───そう、いい意味では聞こえないこと位知っていたのだ。なので、しっかりと農園のみんなは優しかったことを伝えるために「でも」という逆説をつけた。だが、みんなは話を聞いてくれなかったのだ。少しだけ呆れていた。ほんの少しだけだ。


 ***


「リカ...どこにいるんだろうな...」

 もう空はすっかり暗くなっている。まだリカは帰ってきていない。探さなければ。

「やっぱ...探したほうがいいよな?」

「あぁ...そうだよな...」

 どこだ。どこにリカはいるんだ。


 俺は、リカがいなくなってリカが大切であることを気づいた。リカは最初からいたので、ずっといるものだと思っていた。今思えば、俺たちはリカに助けられたことばかりだ。


「リカ...どこにいるんだよ...」


 俺たちは家の外に出て、リカを探す。俺たちは2つのチームに分かれた。リューガ・ショウガ・マユミの3人と、ユウヤ・トモキ・カゲユキの3人の2チームだ。


 ***


 俺たちは花畑へ行く橋の河川敷に移動する。ここに、リカはいるかもしれない。

「リカ!どこに!どこにいるんだ?」


 ───俺たちにとって、リカは大事だ。


 リカがいなければ、「チーム一鶴」はできなかった。「チーム一鶴」の名付け親はリカだ。全てはリカから始まったのだ。リカを、ここで失っては行けない。


 ***


「───カ!───に!───い───」

 外で声が聞こえる。リカはゆっくりと立ち上がった。

「えっと...出口は...どっちですか?」

「私について来なさい...」

「あ、ありがとうございます!」

 リカはワッケラカエンの後ろをついていく。2人は下水管の外に出た。

「もう夜だったんですね...」

「リカ!リカ!いるか?」

「ここで、さよならですね。リカちゃん...」

「はい!ありがとうございました!ワッケラカエンさん!」

 ワッケラカエンは小さく手を振る。

「リカ!リカ!」

 ショウガとユウヤがこちらに向かって走ってくる。リューガはショウガの胸の中にいた。いつもの見慣れた光景だ。心配かけたので、しっかり謝らないと。


「リカ!ごめんよぉ!俺が...俺が変なこと聞いたから!」

 リューガがショウガの胸の中から飛び出す。そして、リカの手の上に乗った。

「私もごめんなさい!勝手に出ていってしまって!」

「俺が悪かった...ごめんな...」

「私もごめんなさい...これで、仲直りですね!」

「あぁ!えっと...あなたもリカのことをありがと...」

 リューガはワッケラカエンの顔を見て、思わず声が出なくなった。そして、こう呟いた。






「お前...何でここにいるんだよ...キュラスシタ...」





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― 新着の感想 ―
[良い点] ワッケラカエン、変な名前だ。 でも何故ショウガが女だと知っている? そしてその正体は……工エエェェ(´゜д゜`)ェェエエ工 でも胸アツな展開ですね!!!
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