第827話 壊れた根城
───『ゴエティア』序列34位のフルフル及び、同じく『ゴエティア』 の序列35位マルコシアスが『妖精物語』に敗北する。
だが、それは必ずしも『妖精物語』に利点があるわけではない。
───25の世界の王城の全壊。
マルコシアスとオーガの戦闘にて、半壊した王城にて繰り出される『暴風の芽』がトリガーとなった。
ポゼッションがフルフルの肉体に憑依したその数十秒後、耐えきれなかった王城が完全に崩壊してその部屋にいた生存者の3人───スクラッチにポゼッション・コンティーの3人はその瓦礫に巻き込まれないようになんとか耐え抜いたのだった。
「城が...ぶっ壊れちまったぜ...」
幸い、『暴風の芽』により上階層の床はすっかり飛んでいってしまっていたので、彼らが押しつぶされることは無かったのだ。
押しつぶされると言ったら───
「───フール」
『妖精物語』の『愚』であるフールの名前を呼ぶコンティー。フールは、『愚愚』で眠らせられた後に、そのまま飛んできた瓦礫の下敷きになってしまったのだ。
寝てなかったにせよ『愚者愚者薔薇薔薇』にて動けなかったので、フールは完全に運が悪かったのだろう。
「勝ったで、フール。ちゃんと眠れや」
瓦礫の下にいるフールに対してそう口にするコンティー。そして、静かに黙祷をした。そして───
「───見てきたよ、フルフルの過去を」
フルフルに『憑依』したポゼッションがそう口にする。『憑依』と言う名前でも、その憑依する条件が様々なので、リューガとは別の能力であった。
「ホンマかいな?何か情報は?」
「あったよ。やっぱり『ゴエティア』だったし、色々と新情報が」
ポゼッションはそう口にする。
───これは、『ゴエティア』序列34位であるフルフルが殺されるまでの物語である。
***
フルフル───私が生まれたのはいつ頃だっただろうか?
詳しくは覚えていないような気がする。でも、大体2000年以上生きてはいるんだと思う。
まぁ、自分の年齢なんて正直どうでもいい。大切なのは、私がこの人生において何をしたかだ。
80年大したことを成さずに生きるのと、偉業を成し遂げて20年で死ぬのであれば、私はきっと後者を選ぶだろう。きっと、それはほとんどの人は同じはずだ。
───そして、私が何をしたのか。
この話の終わりは、きっとここに帰結する気がする。
そうであるから、私がこれまでの人生でどんな偉業を成し遂げたかを話そう。
その成し遂げた物を話すには、前提知識として私が『ゴエティア』に属していたということが必要だ。
私は、幹部からの指名を受けて『ゴエティア』序列34位に選ばれた。
私は、要するに魔神の中でも少数精鋭として選ばれたのだ。
そして、様々な任務をこなした。
だけど、大半は教科書にも残らないような内容だっただろう。
だけど、私は最後の最後でそのチャンスがやってくる。
───そう、今から何十年も前から、私達は『ゴエティア』序列30位のフォルネウスに、25の世界へ潜入して、25の世界を崩壊させる方法を暗中模索させられたのだ。
フォルネウス自体、誰かに命令されて、序列の近い私達に協力を要求をしたのだろう。
私以外にも、マルコシアスやフォラスなどにも協力を要請していた。結果として、序列30位から35位までの6人が参加することになっていたのだ。
そして、私達はその国の侯爵であったり、王を守る兵士であったり、一般人であったり、他国の重鎮だったりと、様々な方法で、様々な角度から25の世界と関わり、25の世界を滅ぼす方法を画策した。
月光徒にも潜入しようと、序列32位アスモデウスは頑張っていたようだったが、それはできなかったようだ。
面接で戦闘になった───という話をよく聴いたのを覚えている。
───と、そんなこんなで25の世界に潜入していた私だったが、マルコシアスと協力して、ついに王城へ攻め込むこととなった。
その大きな理由としては、序列31位のフォラスが殺されてしまったからだ。
『チーム一鶴』なる集団に殺されてしまったらしい。だが、『チーム一鶴』も25の世界に───正確には、サンバードの指示するムーンライト教と、ムーンライト公国に反発しているようだったし、他にも理由が重なって、殺すのは一番最後ということになった。
『チーム一鶴』を殺すのは、サンバードやシュバルツなどのムーンライト公国の重臣及び『妖精物語』を全員殺した後でいいだろう。
『妖精物語』を減らしてくれる、泣いても見なかった嬉しい戦力だ。
───と、フォラスの死によりトリガーが引かれた25の世界の王城襲撃は、私とマルコシアスの双方が死亡して終了した。
だが、それでも『妖精物語』のヴァトルやビジネス・ミックスにフールなどのメンバーを殺すことに成功しているから、十分後に繋いだと言えるだろう。
『妖精物語』の内部に侵入したのに、ほとんど何もできていないフォラスよりかは仕事をしているつもりがあった。
そして、何より大事なのは25の世界の王城を破壊することに成功しただろう。
歴史の教科書にも残るような、大きな功績だった。私は、死ぬ最後の最後にきちんとしたことを有用なことをしたのだった。
だから、私は満足である。これは、胸を張って言える。
序列30位 フォルネウス
序列31位 フォラス
序列32位 アスモデウス
序列33位 (作中未解明)
序列34位 フルフル
序列35位 マルコシアス




