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第822話 敵襲は終わらない

 

 ───崩落。


 その二文字が最も似合う建物は、25の世界の王城であろう。

『ゴエティア』序列35位のマルコシアスと『妖精物語(フェアリーテイル)』の『鬼』であるオーガの2人がぶつかり合った戦闘にて、お互いが今後の人生をかけた覚醒をして一進一退の攻防したものの、勝利の女神はオーガへと微笑んだ。


 マルコシアスは、王城を斬り裂くような凶暴で強靭な刀でその体を2つに裂かれて、散らかりきった王城の一室に眠る。


 ───これにより、オーガは勝利したのだった。


「勝った...」

 そう口にして、その場にドサリとう割り込むのは、オーガであった。城は、もう既に半壊しており少しでも刺激を加えたら、更に崩れそうな中で、こうして安堵して座れるのは彼が、崩落の主因であり、崩落以上の緊張と対峙していたからであろう。


「負けるかと思っちまったぜ...」

 そう口にして、彼はそこに斃れているマルコシアスの清々しい顔を見る。


「───お前は、紛れもない強敵(とも)であった。次、刀を交えることが無いことが哀しいよ...」

 オーガはそう口にする。こうして、マルコシアスとの戦いは幕を閉じた。


 こうして、『ゴエティア』と『妖精物語(フェアリーテイル)』の戦いを幕を閉じ───



 ***


 ───るはずなどなかった。


 崩落、半壊した25の世界の王城の、会議室にて待機していた『ゴエティア』は残る面々───『憑』のポゼッションと『傷』のスクラッチ、『愚』のフールに『続』のコンティー・『混』のミックスの総勢5人は、その崩壊の音を聞き、呆れ返っていった。


「あの野郎ッ!マルコシアスと争いやがったな!俺様を差し置いてッ!」

 そう口にして、抜け駆けしたオーガやヴァトル・イブニングに対して苛立ちを見せるスクラッチ。


「まぁまぁ、そう怒らずに。怒ったところでマルコシアス侯爵とは戦えないんですから」

「そうやで、怒っても仕方あらへん。見ててうっさいから静かにしとれ」

 そう口にして、スクラッチを宥めるのは、ミックスとコンティーの2人であった。


「クソッ!俺様も戦闘できるってなんざ付いていったのによ!」

「戦闘狂のコイツの対応するのは面倒やな。ワイもイブニングと一緒に付いていけばよかったわ」

「コンティーの能力は、イブニングと同じ妨害じゃないか。別に行っても行かなくても構わないんじゃないのか?」

「ポゼッション、お前はまた頓珍漢なこと言っとるな」

「?」

 ポゼッションは、いまいちコンティーの言っていることが理解できていないのか、頭を抱えている。


「まぁ、ええ。崩壊した以上、ワイらもサンバード様救出に動かねばあかへんやろ」

 そう口にして、コンティーは立ち上がる。


「あぁ、クソ...イライラすっぜ。次にオーガにでもあったら引き裂いてやる」

「え、敵はオーガだったのか?マルコシアス侯爵じゃなくて?」

「うっせぇ!ポゼッションは黙ってろ!」

「───ごめん」


「ほら、そんな会話してないで早くサンバード様を助けに行くぞ。一番乗りは怒鳴られるか賞金獲得かの2択だぜ」

 そう口にして、フールは会議室の外に出る。その扉を開けた先には───


「こんにちは。いや、こんにちはの時間ですかね?まだギリギリおはようございますか?」

「「「───ッ!」」」


 そこに立っていたのは、1人───いや、1匹と数えたほうが正しいのだろうか?

 少なくとも、1体の人形の生物がそこには立っていた。


 そう、数える単位を迷ってしまうような奇怪な姿をしている彼は、まるで扉を開けてもらうのを待っていたようだった。

 二足歩行ではあるが、顔は鹿である彼───そう、ゴムでできた被り物ではなく、本当に鹿の顔が人の体に繋がっている彼は、上裸で背中に立派な羽を生やしてそこにいた。

 鵺───とはまた違ったそのキメラのような生物の登場に、そこにいる全員は危機感を覚える。


「な───何者だ、お前!」

 そう口にして、スクラッチを中心に全員が戦闘の準備をする。


「おっと、すみません。名乗るのを忘れていました。いや、名乗るのを忘れていたんではなく、名乗るタイミングなんか無かったわけじゃないか?うーん...」

「タイミングが無かったことでいい!名前を教えてくれ!」

 フールはそう口にして、そのキメラの名前を聞く。


「名乗ります、名乗ります。私は『ゴエティア』序列34位のフルフルです───かね?」

「なんで疑問形なんや!ワイらに聴かれても困るっちゅうねん!」

「すいません、自信がなくて」

「それは、自分の名前の正確さに自信がないのか?それとも、自分自身に自信が無いのか?」

 そんな、どうでもいい質問をしてしまうほどに謎が多すぎる間の抜けた生物はフルフルと名乗った。


 それが、本名かどうか確証はないけれど、一先ずフルフルと呼称しておこう。

 そのフルフルは、武器も持たずに『妖精物語(フェアリーテイル)』の5人がいる部屋の前に立っていた。


 そして、フルフルは『ゴエティア』序列34位と口にしたのだ。

 要するに、フルフルはマルコシアスと同じく『妖精物語(フェアリーテイル)』に対して敵襲をしにきたのだった。


 彼も、『ゴエティア』序列30位フォルネウスの差し金だろう。


 ───こうして、再度『妖精物語(フェアリーテイル)』と『ゴエティア』の勝負は開始するのだった。

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