第796話 フサインの導き
長時間戦闘を行ったのにも関わらず、『六曜』の『先勝』であるローディーの放った『第一指弾』の流れ弾にその体を撃たれて死亡したのは、『妖精物語』の『偽』であるフェイクであった。
フェイクの持っていた『命辛辛』は、攻撃する意思のある攻撃は当たらない───というものであったが、ローディーの放った銃弾は流れ弾になってしまったため、そこに攻撃する意思など無かったようだ。
「全く、俺の努力はなんだってんだ...って話だ...」
投げやりにそう口にするのは、先程までフェイクと戦っていたフサインであった。
彼は、大きくため息を付き、大地の壁を疲れた体を奮い立たせて登った。そこには───
「ガープ様!」
フサインの視界に入ったのは、幼馴染であり昔から付き従っている人物───ガープであった。
フサインは、対して頭が良くないので天才のガープに案を聴いては、それに付き従っていた。
だから、フサインは政治的思想が無くとも「ガープがノースタンを選んだ」のだからノースタンが正しいと、考えて、自らもノースタンに属することになったのだ。
「フサイン、勝利したのか?」
「えぇ、まぁ...人に誇れるような勝利の仕方ではないですが、ちゃんと勝ちました」
「だが、勝ったのだろう?なのであれば、ご苦労だった」
「ありがたきお言葉!」
そう口にして、フサインはその場に跪く。
「ところで、だ。この戦闘の始まりはどんなものだった?」
「この戦闘の始まり───ですか。最初は、『妖精物語』が3人来ただけでした。そこでファンと名乗る人物には勝利しました。その時、ヒストリカを名乗る人物がガープ様のお姿に変身して、『受動型転移』という知らない能力を使ったんです」
「それはだな...すまない。私が隠していた」
「え?!ガープ様、能力は持ってないはずじゃ?!」
「すまん、嘘だ」
「嘘...」
フサインは、自らが信頼されていないから嘘を付かれたのか───などと、その心を痛めた。
「フサイン、お前を信頼していないから能力を教えなかったんじゃない。教えてしまっては、それに頼られてしまうから話していなかったんだ」
「───そう...なんですか?」
「あぁ、だがもうバレてしまったからには使う他ない。次からは積極的に、贅沢に使わせてもらうよ」
ガープは、そんなことを口にする。きっと、話さなかったということはガープなりの考えがあったのだろうし、ここに『六曜』を呼び寄せるために『受動型転移』を使用したのも何か考えあってのことだろう。
それで、続きは?まだ『妖精物語』が登場したところまでしか聞いていないぞ」
「『妖精物語』が登場して窮地に陥った時、『チーム一鶴』が現れました。これは『受動型転移』ではない、俺も知らない能力です」
「はぁ?人が急に現れるだと?そんなわけあるらん」
「あるらん───って言われても、本当なんです!」
「まぁ、フサインのことを疑っているわけではない。信じることにしよう」
「ガープさん、ゾンビの発生源をフサインなら知ってるんじゃないですか?」
「それは、そうだな」
イブの助言に、ガープは納得する。
「ガープ、『六曜』の他のメンバーにドイツがゾンビを発生させる能力を持っているのか教えてやれ!」
「は、はい!───って、『六曜』の他のメンバーも来てるんですか?」
「私が『受動型転移』で呼んだ!」
───そんなこんなで、フサインも最前線まで移動する。
そして、フサインは『妖精物語』の多くいる後方でゾンビを発生させる能力『死屍四肢』を持つ人物───スロープを発見したのである。
「皆!ゾンビ発生の能力を持っているのはアイツだ!」
フサインの指を指す方向を、『六曜』は一斉に見る。
「バレたんかーい...」
スロープはそう口にして、逃げようとするも───
「逃がすものかッ!『羅針盤・マシンガン』!」
その言葉と同時、オルバはスロープを追うように駆け出して『羅針盤・マシンガン』を発動する。
フサインの導きを、オルバは無駄にせずに攻撃したのだった。
「───うがっ」
スロープは、銃弾に背中を穿たれてその場に倒れる。それと同時に───
「俺様の刃の栄養となれやッ!」
「ここで死ぬのがスロープらしいぜ...」
「心を人間にして殺しなければな...」
「スロープの仇は僕が討つ♪」
「戦争万歳!戦争万歳!」
「ぶっころ」
───オルバに襲いかかるのは、多種多様な6人の『妖精物語』のメンバー。
「───ッ!マジかよッ!」
オルバが、その攻撃に対して対応しようとするが全ては間に合わない。オルバは『妖精物語』の一斉攻撃に斃れ───
───ることはない。
「させっかよッ!」
「オルバちゃんは私が守るわ♡」
「・・・」
「死にたいけれど死なせはしない...」
「ここで死なせちゃえば、ママに涙を見せちまいそうだ!」
「神は言っている、ここで死ぬ運命でないと」
オルバを攻撃から守ったのは『六曜』の6人。それぞれの能力や得意分野でオルバを守りきったのだった。
「───クッソ!皆、撤退するっすよ!リーダーの言葉は絶対よ!わかったって聴いてんだオッラーン☆」
「別にアンタはリーダーじゃないがな!撤退に関しては同意だ!今回は、仲間が死にすぎた!」
そう口にして、『妖精物語』のメンバーはその場からトンズラする。
「───はぁ...はぁ...終わった...のか?」
そこに残されていたのは、スロープの死体だけであった。
───これにて、なんとか『妖精物語』を追い返すことに成功したのだった。




