第8話 ジャワラの朝食
俺が透明な箱に閉じ込められて早3日が経った。時間の経過の確認は餌の時間だった。
1日に1度だけ餌が貰える。それで日付感覚をずらさない様にしていた。そして、その日の夜が来た。
「あぁ...どうにかして抜け出せないかなぁ...」
俺は呟く。
”ギィィィ”
古びた鶏小屋の戸が開く音がする。誰か来た。こんな時間に誰だ。
”スタスタ...スタ...”
こちらに近づいてくる。誰だ。一体誰なんだ。
「リューガさん...ですか?」
俺の目の前にはサメリがいた。サメリは小声で話す。
「え?サメリ?なんでここに?」
「助けに来ました...ここから逃げてください!」
唐突な行動に俺は困惑した。どうして、助けてくれるのか。
「え?なんで?なんで助けてくれるの?」
「それは...私があなたこと...」
サメリは暗闇でもわかるほど、頬を赤くする。言いたいことはわかる。サメリは俺のことが好きなのだ。
「やっぱ、なんでもないです!」
「あぁ...そう...で、出してくれるの?」
「はい!ちょっと待っててください!」
サメリは透明な箱を開ける。そして、俺を取り出し、中には別のひよこを入れた。
「あ、サンキュー!」
「そんじゃ、片付けますね!」
サメリは透明な箱を元に戻す。そして、俺を抱き上げ鶏小屋の外に出る。
「本来なら...私はもう帰ってるのですが...今日だけ夜勤です!」
「そこまでしてくれたの?ありがとう!」
「リューガさん...嬉しい...」
可愛い。俺は思った。相手は蜥蜴人間で蜥蜴の顔をしているのに。可愛いと思ってしまった。
俺はサメリに連れられて屋敷の中に戻っていった。
「なぁ...サメリ?」
「なんですか?」
「俺を...ジャワラの飯にしてくれないか?」
俺は一つの推論を立てた。何故俺がリューガの体になれたのかを。理由は食べられたからだと思った。
これで違かったら俺は死んじまうが、それを信じるしかない。
「は...はい?何を言ってるんですか?」
「あぁ...そうか...俺は能力持ちなんだ!」
「へぇ...そうなんですか...それと、あなたをジャワラ様の飯にするのに関係があるんですか?」
「あぁ!だから、明日のジャワラの朝食は俺にしてくれ!」
「わ、わかりました!リューガさんがそう言うなら!私なんでもします!」
「ありがとう!」
そして、俺の脳内にはサメリが言った「なんでもします」が引っかかった。
「本当に...なんでもするの?」
「え?」
俺は思ってしまった。もしかしたら、ジャワラに食われたまま死ぬのかもしれない。そしたら、もう二度と戻っては来れないだろう。なら、最後に欲を発散しておくのはよいのかもしれない。
「なんでもするって言ったよね?」
「リューガさん...そんなこと言うとジャワラ様の飯にしませんよ?」
「しょうがない...我慢するか...」
俺は朝食の準備時間まで待った。そして、その時間がやってくる。
「リューガさん!本当にいいんですか?」
「あぁ!頼んだぞ!サメリ!」
「わかり..ました...」
サメリは俺に向かって口から火を吹く。俺はその火によって焼かれる。痛い。痛い。痛い。覚悟の準備はしておいた。だが、痛いものは痛いのだ。
「リューガさん...ごめんなさい...」
サメリは焼かれたリューガを皿に盛り付ける。その周りには野菜と竜の卵で作ったスクランブルエッグもあった。サメリはそれを、ジャワラのところへと運ぶ。
「失礼します。朝食の準備ができたのでご用意しました」
「そうか...ありがとう...」
サメリは領主室に入る。そして、ジャワラの前に朝食を出す。もちろん、リューガの丸焼きもそこにはあった。
{どうか...リューガさんが生き返りますように...}
サメリは心の中でお願いをする。
「どうした?もう下がってよいぞ?」
「は!はひ!すいません!」
サメリは急いで部屋から出る。しかも返事は噛んでいた。よほど緊張していたのであろう。
「今日はひよこの丸焼きか...」
ジャワラの前にはパンとひよこの丸焼き・竜の卵のスクランブルエッグとサラダが並んでいた。
ジャワラはパンを食べ始める。ジャワラは黙々とご飯を食べる。
そして...ジャワラはひよこの丸焼きを食べる。
***
「おい...ここはどこだ?」
《Dead or chicken?》
俺の頭の中に声が響く。この言葉を待っていた。
「チキン!」
その瞬間、俺の視界は光に包まれる。俺は思わず目を瞑った。そして目を開ける。
***
俺の目の前には食べかけのパンとサラダが残っていた。俺は自分の体を見る。しっかり高級そうな服を着ていた。しっかりとジャワラの体に乗り移っていた。俺の頭には膨大な量の情報が入ってくる。
「えぇと...名前はジャワラで...年齢187歳...この屋敷の領主...能力は生物変化...人間は嫌いなフリをしている...え?人間嫌いなフリなの?」
俺は一人で呟く。頭の中の情報を整理していた。
「ヘイターに殺されないように人間嫌いのフリをしていた...ふぅん...」
俺は思わず立ち上がった。
「あ!そうだ!全員にかかっている能力変化を解除する!」
そして、俺は急いで豚小屋にいるショウガのところへ急ぐ。ショウガがこれで人間の姿に戻っているはずだ。
そこに向かう間も頭の中の情報を整理する。
「アイキーは...5ヶ月程前にヘイターに取られた?ここにはないだと?」
アイキーは手元にはなかった。ヘイターのところに合ったのだ。
「次の目標は...ヘイター!お前だ!」
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