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第763話 暴走する影

 

「『羅針盤・ダブルマシンガン』ッ!」


 ”ドドドドドド”


 オルバの攻撃は、暴走し始めた影に放たれる。だけど、打ち込まれる大量の銃弾を持ってしても暴走する影を止めることはできなかった。


 ───キャッツを、失神させただけ。


 俺達は、キャッツを尋問して『妖精物語(フェアリーテイル)』の話を聞こうと思ったのだけれど、それは許されないようだった。

 俺達はてっきり、現在囚えられている白黒の空間───キャッツの能力である『白黒世界(ホワイトノイズ)』はキャッツが失神すれば解除されて現実に戻ると思っていたから、影が暴走するとは思っていなかった。


 異空間に引きずり込むタイプの多くは、失神したり死亡したら解除されるけど、ここはそうではないようだった。目の前にいるのは、暴走する影。


「全く、常識が通用しないとはな...」

 大地の魔法が使えないために、戦闘する術を持ち合わせていないイブがそう口にする。


「イブさん、私達も何か戦える方法を覚えたほうがよくないですか?」

「そうだな。ステラは大変危険だが自らに狂乱の魔法をかける───という方法を手に入れた。俺達も何か動く必要がありそうだ」

「えっへん!」

「ステラ、別に誇れることじゃないぞ。ステラの体に悪いことなんだからな。俺が傷付いたらステラが悲しんでくれるように、ステラが傷付いたら俺も悲しいんだ」

「イブさん...」


「イチャつきやがって───って『破壊』ッ!」

 イブ達に迫る影になんとか『破壊』を使用して、どうにか対処する。バトラズが唯一放てるモンガ剣舞の「1の舞 麗花」と俺の『破壊』でなんとか影を壊せる感じだ。


「すまん、リューガ!俺の『羅針盤・マシンガン』じゃ足止めにすらならない!」

 オルバがそう口にして、影を避けながら暴走した影を避けてイブ・ステラ・リミアの3人が固まっている場所に合流する。現在、イブ達が立っているところは白い地面───要するに、影が出てこないところだ。


 ───と、説明していなかったが影は全て「黒」に塗られたところからのみ出てくる。


 まぁ、黒が元々あってその上に白が塗られたのか、白が最初でその上に黒く染めたのかはわからないが、大事なのはそこではない。

 今大切なは、白黒2色の内、黒の方からのみ暴走する影が出現していることだろう。


 ───この暴走する影の面倒なところは、影が無生物であるがためにいくら攻撃しても無駄であるところなのである。もちろん、『破壊』などで壊してしまえば、無力化は成功する。

 だけど、オルバの『羅針盤・マシンガン』などの粉砕できない攻撃は無駄なのである。影は、無生物だから怯んだりしない。死亡という概念がそもそもないので、『羅針盤・マシンガン』などの攻撃は避ける必要などないのだ。


「しかもクソ硬いから俺の銃弾じゃ貫けない!」

 できて、表面を傷付けることができることくらいだろう。雨垂れ石を穿つ───と言うが、それが求められるのは今ではない。今は、速攻で破壊できるような何かが必要だ。


「この影を止めるためには、キャッツを殺すしかねぇのが嫌なところだぜ!」

 そう口にするのは、俺達から10m程離れたところで戦っているバトラズであった。暴走した影の移動は、静かなのでそれなりに声は通る。


 どうしてバトラズがそんな離れたとこで剣を振り続けているのかというと、そこの近くにキャッツを包みこんだ影が存在しているからだ。


「クソッ!より固くなってやがる!一撃いれる度に、周囲から何本も攻撃がくるからやりずれぇ!」

 バトラズは、そう口にして周囲にいる暴走した影に対応しつつ、立っている影を攻撃している。だけど、あまり穴を開けられている感じはしなかった。


 バトラズを助けに行きたいが、俺はオルバ達を守らなければいけない。俺が『破壊』で迫ってくる暴走する影を壊さないと、皆は影に殺されてしまうだろう。


「バトラズ、すまん!そっちを助けに行けそうにない!」

「わかってる!だから、リューガはそっちに集中していてくれ!」

 バトラズに、そんな言葉をかけられる。バトラズは、自分一人でできるようだった。ならば、俺は皆の防衛に集中した方が良いだろう。


「───しょうがない。そっちがここまでの猛攻ならば、俺も猛攻だ!」

 そう口にして、バトラズは構えを変える。きっと「1の舞 麗花」とは別の技を放つつもりだった。


 だけど、彼が完璧に使用できるモンガ剣舞は「3の舞 風鈴」までであるが、一番破壊力があるのは「1の舞 麗花」であるし、普通の剣技ではこの暴走した影を切り落とすこともできない。バトラズは1体どうするのだか。


「───完全に不完全だが、後先なんか気にしてられん。一発逆転に賭けて俺は攻撃するぞ」

 その宣言と同時に、バトラズが動き出す。そして、放ったのは───


「4の舞 懺悔擬き」


 バトラズが使用するのは「4の舞 懺悔」を真似して行う技、「4の舞 懺悔擬き」であった。

 完全に再現こそできていないが、1の舞以上の破壊力は保持していた。しかも、「4の舞 懺悔」は「1の舞 麗花」とは違い乱撃であるために、一気に迫ってくる暴走する影と、キャッツを守る影の両方を斬ることができていた。


「───さて、終わりだぜ」

 その言葉と同じように、剥がれるようにして俺達の支配する空間がパリパリと削れていく。


 ───バトラズは、キャッツのとどめを刺すことに成功したのだった。


 誰も文句をつけることができないほどに、バトラズの完全勝利である。

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