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第754話 教祖の行動

 

 ショウガが死亡したことを聴き、誰よりもショウガと親しかったリューガは絶望の淵に叩きのめされて、号哭に暮れていても、ショウガが生き返ることが無ければ、時間が止まることもない。


 ───そう、物語は前へ前へと進み続けるだけなのだ。


 ショウガの死を知った今も───否、もっと正確に言うのであれば、リューガ達『チーム一鶴』がオイゲンやシュベック・ライザなどの『付加価値(アディショナルメンツ)』と戦っていたいた時から、別のところで物語は進んでいた。


 ───視点は、主人公であるリューガから、25の世界の、25章の最重要人物であるムーンライト教の教祖であるサンバードと、その手下であるシュバルツの2人に変わる。


 ───まだまだ、25章は始まったばかりだ。


 オイゲン達『付加価値(アディショナルメンツ)』との戦いなんか、25章の序章にも過ぎない。


 ───この話を果てて、ついに25章のプレリュードは終了する。


 ここが、ターニングポイント。ここが、歴史の転換点。



 ───戦争の歴史は、いつだって唐突である。


 ***


「クソッ、クソッ!あのクソ月光徒の判断が遅いせいで、蜜月神社が忌まわしき『チーム一鶴』に奪われてしまったではないか!」

「サンバード様、落ち着いてください。大丈夫です、まだ取り返す手立てはあります」

「本当か?シュバルツ!」


 月光徒に対して、怒りをぶつけるサンバードを宥めるように、声をかけるのは部下であるシュバルツであった。

 上司の機嫌取りも、部下の仕事───というのは、少し不憫に見えるような気もするが、社会ではどれもこれも当たり前である。


「はい、まだ策はあります」

「それを早く言えっ!勿体ぶる必要はない!」


 サンバードに急かされるようにして、シュバルツは自らの意見を口にさせられる。これで失敗しても、サンバードはシュバルツに全責任を押し付けるというのに、前置きなどを無視して大事な話を聴こうとするのは、少し理不尽な気もするが、サンバードのそんな傲慢な醜い性格は生まれつきなので文句を言っても意味はない。


「───革命です、革命を起こすのです」

「革命...とな?詳しく聴かせてくれ」

「現在、ムーンライト教は25の世界の7割を超える人民から信仰されています。それに、25の世界には革命の火種となれるような月光徒のメンバーも多くいます。だから、国民を利用し現在の王国を打倒し、25の世界の覇権を手に入れ、ムーンライト教を大きくすると同時に、『チーム一鶴』を叩き潰すのです」

「だが、信者はそれに乗ってくれるのか?」


「私達は何者ですか?」

「私は教祖、貴様は手下」

「───。まぁ、部下であり手下ではないのですが、ほとんど正解なので反論はしません。大事なのは、サンバード様が教祖であること。サンバード様の声はまるで鶴。簡単に信者を動かすことができます」

「ほう、私が言えば信者は動くとな」

「そうです。あなたの野望、叶えましょうよ」


 シュバルツは、そう口にする。

 25の世界の王として、サンバードが君臨するとしたら、サンバードは元より裕福な今より格段に裕福になるだろう。だが、今よりも仕事が増えるのは火を見るよりも明らかだ。


 ───が、シュバルツはサンバードが王になった際の、内務は、事務仕事は、全て自分で引き受けようと思っていた。サンバードに一番従順で有能な部下は、シュバルツ以外いないのだ。


 それに、王になったら謁見などが増えるだろうけれども、今でも教祖として君臨している以上、誰かと対面する───などという作業は、多く行っていた。


 それ故に、王になっても業務に関する心配事はほとんど無いに等しかった。


「───では、わかった。今すぐにでも信者を集め、この事態を収束させようじゃないか。そうだな...」

 サンバードだって、馬鹿ではない。彼は思案をし続ける。『チーム一鶴』のせいで逃げ惑う羽目になった参拝客が周囲にいる中で、彼は声を張り上げる。その一言は、まるで鶴の一声。


「聴こえるかッ!我が名はサンバード!神のお告げを伝えに来た!」


 その言葉を聴き、信者は安堵する。この混乱を鎮めるように、髪はお告げをくれたのだ───と。

 実際には、神などいないしサンバードのでっちあげなのだけれど、誰もそんなこと気にしない。

 何故なら、宗教などそんなくだらないものであるからだ。


「蜜月神社の襲撃を行ったのは、王の一派であった!これは王からの宣戦布告!それ故に、今から私は王を狩りに行く!並べ、まとまれ、一列に!王城へ出向き、我らが天下を取ってやろう!」


 そう口にしながら、サンバードは歩き出す。声を張り上げ、周囲にいる信者を呼び集める。


 信者一人ひとりは弱いかもしれない。だが、宗教という同じものを愛する一種のナショナリズムとも呼べるような感情と、王という共通の仮想敵が存在している今、サンバード率いるムーンライト教信者は、まるでスイミーのように塊としても大きく、パワーとしても強大になっていくのであった。


 ───これは、革命だ。


 25の世界の王族を打倒し、ムーンライト教が王国を作る。国名は既に決まっていた。その名も───




 ───ムーンライト公国

25章、開幕

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